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波の音が聞こえる場所で
第9章 安奈という女について
 腹が立った、僕といっちゃんの楽しいゲームに勝手に入り込んで、でもって白組の劣勢と言いやがった。クソ久須美。むかつく久須美。どうしてやろうかこのハゲ!(久須美の名誉のために言っておくが久須美はハゲてはいない。でもどういうわけか誰かを罵倒するときに必ず出てしまうワード、それはハゲ。※久須美に名誉なんてないと思うが)。
 しかしこのままでは白組が負けてしまう。そうだ!
「いっちゃん、森進一さん、ジングルベルとか歌ってない?」
 僕はクリスマスムードを森進一さんにかかけた。だが……。
「ないです」
 いっちゃん即答。
 いっちゃん、こういうときはね、大人のためにも間が必要なんだ。だからね……。
「先輩、先輩の川中美幸さんは歌ってないですか? サイレントナイトとか」
 いっちゃんには僕の心の声は届かない。でもいっちゃん、先輩の川中美幸さんていう言い方、悪くないよ。
「……だめ、美幸さんも歌ってない」
 断っておくが、森進一さんだって川中美幸さんだってプライベートではクリスマスソングを歌っているはずだ。奥さんや旦那さんやお子さんやお孫さんの前で(川中美幸さんに旦那さんがいたら僕はめちゃくちゃショックだ。ザ・美幸ロス)。聴いてみたい、森進一さんのジングルベル。癒されたい、川中美幸さんのきよしこの夜で。
「いい議論だね。白組はここで挽回しないとかなりやばい状況だよ。とにかくもうすぐクリスマス。我がlight houseにやってくるお客様の財布の紐を目一杯緩くしてやろうじゃないか。ねぇ、そうだよね?」
 そうじゃねぇよハゲ、と言いたかったがもちろん言えない(そしてもう一度言うが久須美はハゲていない)。
 こんなんだったらまだガキども相手に算数とか国語を教えていた方がよかった。むかつくガキどもの「先生って東大じゃないですよね? 僕たちに勉強教えられるんですか?」とぬかしたガキの方がまだ可愛い(少なくともあいつらは僕のことを借金まみれだとは言わない)。まぁ特に会いたいと思わない。でも直江との約束であのガキどもの前で僕は土下座をしなければいけない(土下座なんて大したことないよと自分に言い聞かせているが、少しだけ躊躇う自分もまたいる)。キラキラした東京に未練なんてない……が、新潟もまた僕を拒絶しているような気がした。寒いし、風強いし、でもって死神はいるし、いいことなんて一つもねぇよ!
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