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波の音が聞こえる場所で
第9章 安奈という女について
『襟裳岬』に心は残るが、ゲームはまだ途中だ。ゲームさえ終われば死ぬほど『襟裳岬』が聴ける。
「じゃあ、今度は僕ね」
 僕がそう言うといっちゃんは「おおおおお」と反応してくれた。思い付きのゲームだったが、だんだん僕ものりのりになってきた。
 目を瞑る。普通に取り上げたのではつまらない。だってこれだけ盛り上がってきたんだ。箱の中に手を入れ、僕は僕の手が感じる何かを探した。探して探して探しまくった。そして何だかじりじりと感じたカセットを掴んだ(じりじりは錯覚だと思う)。
 ゆっくりゆっくり、さらにゆっくり手にしたカセットを持ち上げて行った。そして……。
「いっちゃん、カセットのこの人誰?」
 僕は目を瞑ったままいっちゃんに訊ねた。
「川中美幸さんです」
 いっちゃんがそう答える。僕は目を開ける。
 おおおおお!キター!和服を着た美人。そんでもって……そんでもって熟した女性。神はこのクソ田舎にもいた。逆境と戦っている僕を励まさんと僕にいっときの幸せを運んでくれたんだ。
 しかし冷静になれ。落ち着かなくてはいけない。心の中で小躍りしている己の姿をいっちゃんに悟られてはいけない。僕が熟女好きだなんて知られてはいけないのだ。だが、だが胸が高鳴る。
 思い付きのゲームでこんなに盛り上がるなんて。
 でも和服なんてやめてくれ。僕が好きなのは普通のおばさんなのだ。普通のおばさんはキラキラした和服なんて着ない。僕が望むのは生活の匂いを含んだ服を着て、エコバックの中から長ネギを覗かせている普通のおばさんなのだ(薄幸そうならなおよし)。頼む美幸!
 僕は普通の美幸(普通の美幸……察していただきたい)を後ろから抱きしめてくんくんしたい。そのとき美幸はこう言うだろう。
「翔君、犬みたいよ」
 僕はこう答える、いや、叫ぶ。
「僕は……僕は美幸さんの犬です!」
 と。
 妄想がどんどん湧いてくる。
 やばい、まずい、非常に危険な状態だ。健康な二十歳を越えた青年はもう我慢ができない。平和なリサイクルショップに一匹の狼(このご時世なので熊かもしれない)がいる。 
 沸々と沸騰してくる性欲と僕は対峙しなければならない……のではなくすでに対峙している。こうなったのもすべては美幸のせいだ。どうしてくれるんだ美幸。責任を取ってくれ!僕に……この僕にクンクンさせてくれ!プリーズ!
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