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雨が好き
第78章 昼間の夢
「私はねー」
水際さんが言う。
くいっとコップのビールを飲み干し、タン!とそれを置いた。

「東京に・・・行く!!」

え?

水際さんが、にっと笑った。
「デザイン勉強している学校でさ、先生が来ないかって。東京のお店手伝いながら、ファッションの勉強しようかなって」

え・・・え・・・?

『おお、すごい』とお母様と蒼人さんが言う。
水際さんはまんざらでもないようだったけど、私は、今度は胸がドキンとした。

去年の秋に知り合って、いっぱいおしゃべりして、
お泊りもして、
たくさんのことを教えてもらって、
まだまだずっとずっと一緒にいられると思ったのに、
同じ毎日が続くと思ったのに、

水際さんがそばにいなくなる。
それが私の中にしっかり落ちてくるまで、なんだかとても時間がかかった。

「みなとちゃんは?」
声をかけられてやっとハッと気がつく。

私・・・私は・・・。

抱負・・・
今年、やりたいこと。
この『先』やりたいこと。

そう考えて、初めて私は気がついた。
 ずっと、『今』を過ごすのに、精一杯だった。
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