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雨が好き
第67章 クリスマス・ディナー
「本当はクリスマス・イブの日に予約取りたかったんですけどね」
さすがに気づいたときには、もういっぱいでした・・・。

そう言って、少し恥ずかしそうにしたが、私にとっては、十分過ぎた。

小さい頃、クリスマスはプレゼントが貰える、嬉しい日だった。
でも、小学校の時の『あのこと』があってから、楽しいと感じることはなかった。
正確に言えば、楽しいと感じる暇がなかった。

キュッと、ナプキンを握りしめる。

こんなに、素敵な夜・・・なかった。
ずっと、私のこれまでに、なかったこと。

胸が、熱い。
何かがいっぱい溢れてきそうだった。

その何かは、私の心で、涙に変わって、瞳からこぼれていく。
頬を伝って、ぽたり、ぽたりと、落ちていく。

「みなとさん」
蒼人さんが、ゆっくりと、しっかりとした声で名前を呼んでくれる。
その言葉で、その声で、わかった。
多分、私が泣いている理由、伝わっている。

お話しなくても、心が伝わること。
それは、私をこの上なく安心させた。

「ありがとう」
やっとそれだけ言うのが、精一杯だった。
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