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天狐あやかし秘譚
第71章 其疾如風(きしつじょふう)
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【其疾如風】行動の早さが風のようであること。
『疾きこと風の如し』みたいな。
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カダマシは、嗤っていた。闇夜を走りながら。そのスピードたるや、風すら追いつけないだろうと考えられるほどだった。速度を測ったことはないが、航空機にも劣らないほどの速さで地上を疾駆できるこの身体能力に酔い痴れていた。

もうすぐ・・・目的地だ。

当然、この速さについて来られる訳が無いという慢心がそこにはあった。しかし、あと数分もすれば目的地、というところで、ふと、彼は違和感に気づく。

風を切る音の中にかすかに不定期な気配を感じるのだ。それは呼吸音のようでもあり、別のなにかであるようでもあった。

なんだ?

やや気になったので、聴力を高める。轟々とすぎる風の音をキャンセルするように神経系を変異させ、その中から有意味な音だけを拾い出せるようにチューニングをする。それには数秒の時間を要した。

タン、タン・・・タタン!
タタタ、タン・・・

それは何かを蹴る音、そして、呼吸音、心拍、衣擦れの音だった。

後ろに、ピッタリとついてくる。引き離せていない・・・。
まさか!

考えられる結果にゾッとして、カダマシは足を止めた。そこはすでに島根県に入っていた。

「しつこいな」

大口真神の口ではしゃべりにくい。カダマシは、そのモードを『童子』に切り替えていた。闇をも見通す視力が、背後から追ってくる影を捉える。

「・・・ダリよ」

バリンと灌木を割り、ダリが飛び出す。その左手には古槍が握られ、瞬きする間にその穂先が半月形に空間を削り取る。

おっと!

カダマシもまた、その神憑かった反射神経でそれを感知し、スウェイバックで躱す。驚異的な動体視力と判断力で、首からギリギリ数ミリというところを槍の穂先が掠める程度に回避をしてのけた。

やっぱ、こいつは強えっ!

カダマシの計画では、あのままダリを振り切ってアジトに戻り、女を凌辱、半死半生のまま残した上で悠々と死返玉とその適合者を連れて、予定された場所に行く・・・そうなっていた。しかし、よもや大口真神の速度について来られるとは、そして、腕を食いちぎられたにも関わらずここまで食い下がってくるとは思いもよらかなったのだ。
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