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天狐あやかし秘譚
第70章 反転攻勢(はんてんこうせい)
☆☆☆
暗闇の中、ダリは疾駆していた。カダマシの大口真神(おおぐちまがみ)により乱暴に食いちぎられた腕は、妖力での簡易的な止血を施してある。少々の傷ならば再生できるが、ここまでの損傷であると、食いちぎられた腕そのものがないと簡単には再生できない。

そして、今は身体の再生に妖力を割いている暇はなかった。

カダマシは早い。闇夜を宙を飛ぶかのように疾走するダリをしても、それとの距離を詰めるのは容易ではなかった。

いる方向は分かる。向かっている先も・・・分かる。
綾音は、あの先か?やつが向かっているのは?

向かっている先は補足できても、その目的地までを知る術はダリにはなかった。とにかく、今はカダマシを追う、それしか綾音の居場所を特定する方法はないのだから・・・そう言い聞かせて、ダリは走り続けた。
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