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天狐あやかし秘譚
第68章 多情多恨(たじょうたこん)
あるとき「俺はいつまでここにいなきゃいけないんだ?」と問うたことがある。その時の巫女の答えは「貴方様は選ばれた人。時が来たら出ることができます」というなんとも人を煙に巻いたような答えだった。

何年が経っただろう?
一日、一日は分かるが、それが積み重なると一体自分がここにどのくらいいるのかがわからなくなってくる。

そして、ついに『時』が来たようだった。
あるとき、巫女から、これまでは入ってはいけないと言われていた部屋に案内された。そこは他の部屋より広く、左右は壁、続きの間があり、そこは一段高くなっていて、御簾のようなものがかかっていた。

御簾の前、左右に別れ、巫女と同じような格好をした女が二人いた。この屋敷に来てから、巫女以外の人を見たのはこれが初めてだった。

左右の女は顔立ちが似ていた。似ていた、というか瓜二つだった。おそらく双子なのだろう。ただ、見分けはつく。というのも、御簾に向かって右側の女は巫女服が桃色であり、左側のそれは青色だった。また、手にはそれぞれ古代の銅鏡のような鏡を持っているのだが、右の女のそれは裏が黒、左の女のそれは裏が白だった。

それぞれの女は、右側が「キヌギヌ」、左側は「スクセ」と自分らの名を名乗った。

巫女から座って頭を下げるように言われたので、従う。ここに来てから初めて言われた「命令」だった。

「ああ、どうだい?身体は問題ないかい?」
御簾の向こうから男の声がした。この声には聞き覚えがあった。あの雨の日、自分を『助けた』男のものだった。

ただ、身体はどうなのか、と言われてとっさにどう答えていいかわからなかった。頭を下げたまま黙っていると、右手のキヌギヌが『お館様が問うておられる。答えよ』とキツめの口調で言ってきた。

お館様・・・つまり、この屋敷の主、ということ?
別段逆らう気持ちがあったわけではなく、むしろ、感謝をしているくらいだったので、俺は素直に答えることにした。

「特に問題は感じません」

顔は見えないが、ふっと御簾の中で笑ったような感じだけがした。

「やっとお前のシンポウが見つかったよ。これまで、不便をかけたね。これで晴れて君は自由だ。スクセ・・・」
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