この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第68章 多情多恨(たじょうたこん)
「ああ・・ああ・・あ・・・・」

手を離し、壁際にへたり込んだ。
変色した顔、見開かれた眼、瞬きを忘れたまぶた。

「ああああ!」
這うように、四つ足で俺はまたしても、そこから『逃げた』。階段を転げ落ちるようにおり、靴を履き、伸び放題の髪の毛と、シミだらけのパジャマを着たまま、玄関からまろびでて、ひたすらに走った。

田舎道だ。通行人なんていない。
走って、走って、走って、あぜ道を抜けて、林道を駆け、山に入り、藪を抜け、どこをどう走ったかわからない。見えない追手から逃げて、逃げて、逃げて、逃げた。

そして、気がつくと、俺は、どこともわからない、森の中
ポッカリと開けた場所に、横たわっていた。

闇雲に走って来て、もう、ピクリとも動けなかった。
疲労、空腹、絶望、怒り、
あらゆる感情が交錯して、とりとめがつかない。泣いていいのか、怒っていいのか、ほうけていいのか、それすらわからなかった。

ポツリ、ポツリ、ポツリ、

頬を、額を、胸を、雨粒が叩いた。
それは瞬く間に増え、身体中が雨に打たれるまでにそれほど時間はかからなかった。

身体が、冷えていく。
何もかも、冷えていく。

力なく、認めもされず、
絶望して、ただ、絶望して、
何者にもなれず、その上、罪まで犯した。

ここにきて、どうすることもできなくて、ただ、冷えていく。

涙が、溢れた。
心から、嗚咽が湧き上がった。

喪失感・・・?違う
罪悪感・・・?違う
怒り・・・?違う

これは、これは・・・・

『悔しさ』

だ。バカにされて、弱く生まれて、与えられずに生まれて、虐げられて、蔑まれて・・・そうだ、そう・・・このまま死んだら、俺は・・・俺は・・・

悔しい、悔しい、悔しい、悔しい!!
許せない・・・
与えられているものが、生まれつき恵まれているものが
そんなやつがいるなかで、俺がこんなところで野垂れ死のうとしていることが!
なぜ、俺がここで死ぬ?
母親を殺したから?
馬鹿な!俺に何も与えなかった、俺を強く産まなかった、その罪を雪いだだけだ。
なんでだ?なんでだよ!
/1067ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ