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天狐あやかし秘譚
第66章 奸智術数(かんちじゅっすう)
☆☆☆
陰陽寮本庁の屋上。屋上というか、鉄柵に囲まれたコンクリ打ちっぱなしのフロアが広がっている場所がある。本来は天文部門が観測を行ったり、儀礼を行うためのスペースとして用意されているものだが、それ以外の用途で使われることはほとんどなく、大抵の場合は誰もいない。

その広間の中央で、ダリは片膝を立てて座っていた。
目は閉じられている。天狐としての耳と尻尾が出ており、その衣装はいわゆる平安時代の貴族の狩衣というのに類似していた。
綾音が言うところの『狐神モード』である。

目は閉じているが、耳が忙しく動いているところを見ると、彼は彼なりに綾音の行方を探ろうとしている、そんなふうにも見えた。

「天狐はん」
屋上部の階段入口に背をあずけ、土御門が声をかけた。ダリが面倒そうに目を細く開いた。ビリっと体表にあふれる妖力が導く雷光が走る。

「わいらも綾音はんのこと、全力で探しとる・・・。絶対、取り戻すさかい・・・」
そこまで言ったが、その後が続かない。
正直言って、ダリの超妖力にも、全力を挙げた占部衆の探査にも引っかからないというのは、状況がかなり悪いことを示唆している。

彼らが綾音を狙った理由は明らかだ。
ダリの無力化・・・その一点しかない。

何らかの方法でダリの妖力の補充方法を知ったのだ。その補給路を断つことで、陰陽寮側の戦力の大幅ダウンを狙った、そう考えるのが最も妥当だ。

そうなると、連れ去られた時点で、彼らが綾音を生かしておく必要は・・・
そこまで考えて土御門は頭を振る。

いや、違う。そんなら、その場で殺していたはずだ。
敵は綾音が麻衣を助けに動くことまで読み切って、蛇まで配置した。
その蛇を猛毒のそれに変えて噛ませるなり、そもそも巨大になったカダマシに踏み潰させるなりすればそれでいいはずだ。

それを敢えて攫った。
そこには必ず理由がある。つまりは、生きている・・・。

そう、信じたかった。
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