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天狐あやかし秘譚
第66章 奸智術数(かんちじゅっすう)

♡ーーーーー♡
【奸智術数】悪知恵や悪だくみのこと。。
あれこれ策略をめぐらして悪いこと考えちゃうぞ!みたいな。
♡ーーーーー♡
「雄一くん、遅いよ」
部室にはすでに沙也加が来ていた。これでも急いだつもりなのだが、なにせ教室を出るときに先生に声をかけられて少し話し込んでしまってタイムロスした。そんなこと、言い訳にもならないけれど。
雑文同好会の部室は机が4つつきあわされているだけのシンプルなものだ。大した設備もなく、広さもない。その机のひとつに向かって、同級生である植草沙也加(うえくさ さやか)が座っていた。
初夏の午後。沙也加の向こうに見える窓の外は明るい陽射しに溢れていて、学校の外周に植えられた木々の葉はその光を返してキラキラと輝いている。陽射しは、窓を通して沙也加をも後ろから照らしている。それは、はっとするほど美しい光景だな、などと僕は思ってしまった。
雑文同好会とは、詩や小説、エッセイ、どんなものでも「文章」と名がつけば書いて良し、という、非常に活動範囲の広い集まりだ。部員は中2が僕と沙也加、それから中1の佐藤美玖(さとう みく)、中3の片瀬亮太のたった4人である。
まあ、たった4人しかいないからこそ『部』にはなれず、『同好会』なのだが・・・。
そして、活動範囲が広いということは、特に決められた活動があるわけではないことを暗喩している。要は放課後にこうして集まって、互いの文章を見せたり、書いたりする、そんな時間を一緒に過ごす会なのだ。
別に遅れたからといって支障はない。
沙也加が僕のことを遅いと言ったのは、先日から僕らが付き合い始めた、いわゆる恋人同士になった、ことに由来する。
片瀬先輩は中3になり、受験が本格化することから、ほとんど部室には来なくなっていた。中1の佐藤は委員会なんかを一生懸命やっており、部活は「何か入らなくてはならない」からとりあえず雑文同好会を選んだ、という程度なので、ひっきょう顔を出すことが少なくなりがちである。
【奸智術数】悪知恵や悪だくみのこと。。
あれこれ策略をめぐらして悪いこと考えちゃうぞ!みたいな。
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「雄一くん、遅いよ」
部室にはすでに沙也加が来ていた。これでも急いだつもりなのだが、なにせ教室を出るときに先生に声をかけられて少し話し込んでしまってタイムロスした。そんなこと、言い訳にもならないけれど。
雑文同好会の部室は机が4つつきあわされているだけのシンプルなものだ。大した設備もなく、広さもない。その机のひとつに向かって、同級生である植草沙也加(うえくさ さやか)が座っていた。
初夏の午後。沙也加の向こうに見える窓の外は明るい陽射しに溢れていて、学校の外周に植えられた木々の葉はその光を返してキラキラと輝いている。陽射しは、窓を通して沙也加をも後ろから照らしている。それは、はっとするほど美しい光景だな、などと僕は思ってしまった。
雑文同好会とは、詩や小説、エッセイ、どんなものでも「文章」と名がつけば書いて良し、という、非常に活動範囲の広い集まりだ。部員は中2が僕と沙也加、それから中1の佐藤美玖(さとう みく)、中3の片瀬亮太のたった4人である。
まあ、たった4人しかいないからこそ『部』にはなれず、『同好会』なのだが・・・。
そして、活動範囲が広いということは、特に決められた活動があるわけではないことを暗喩している。要は放課後にこうして集まって、互いの文章を見せたり、書いたりする、そんな時間を一緒に過ごす会なのだ。
別に遅れたからといって支障はない。
沙也加が僕のことを遅いと言ったのは、先日から僕らが付き合い始めた、いわゆる恋人同士になった、ことに由来する。
片瀬先輩は中3になり、受験が本格化することから、ほとんど部室には来なくなっていた。中1の佐藤は委員会なんかを一生懸命やっており、部活は「何か入らなくてはならない」からとりあえず雑文同好会を選んだ、という程度なので、ひっきょう顔を出すことが少なくなりがちである。

