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天狐あやかし秘譚
第127章 有為転変(ういてんぺん)
鈍い音がした。目の前の姉の青い巫女服の背が赤い光に照らされて桃色に見える。その背を切り裂いて天狐の持つ槍の切っ先が生えてきたのが、まるで冗談のように私の目に映る。次いで、血しぶきが飛び散り、私の顔にべチャリと生暖かなものがこびりつくのを感じた。
崩れ落ちる姉の身体。
その時、彼女がこちらを見た。
その目は、悲しみとも、安堵ともつかない、不思議な色をたたえていた。
「ダリィ!!!」
絹を裂く悲鳴のような呼び声が森に響いた。それが綾音のものだということは薄っすらと分かったが、目の前の光景があまりにも非現実的すぎて私の思考は止まってしまっていた。
お姉ちゃん・・・?
なんで?
一瞬の内に、過去から今までの姉との思い出が頭の中を駆け巡った。
いつも一緒にいた姉。
鏡写しのように、同じ顔の姉。
何かをするときにはいつも私より先にやって、
それで、大丈夫そうと思ったら私にやらせて・・・
そうだ・・・そうだった・・・
その姉が、目の前で倒れた。
「早く!止血を!」
「本部に連絡をするのです」
「早く、早く!!」
辺りで陰陽師たちが騒いでいる。
その喧騒をよそに、私はふらふらと姉に歩み寄っていた。辺津鏡を取り落とし、戦う意志はとうに削がれていた。
「お姉ちゃん・・・?」
天狐は自ら刺した槍を引き抜くことができなかった。それはそうだろう。今、引き抜けば出血多量でショック死するのは目に見えている。横抱きに抱いて回復用の妖術を使っているようだが、腹に獲物が刺さったままではその効果も限定的だろう。
私がかくんと膝をつくと、私の顔を見て、姉がゆっくりと手を伸ばしてきた。その指が私の頬にそっと触れる。
「よ・・・かった・・・水有が死なないで」
姉が小さく言葉を紡いだ。
良かった・・・?
一体それは・・・
「ご・・・めん、水有・・・私・・・あなたが死ぬ未来を見てしまったの・・・」
触れた手の体温が冷めていく。まるでそこに通う命の火が消えつつあるように。私は自らの手を頬に寄せ、姉の手に重ねていた。そんなことをしても、もう温まりっこないのに、だ。
「ごめん、水有・・・私、あなたに嫉妬して・・・それで、それで・・・」
崩れ落ちる姉の身体。
その時、彼女がこちらを見た。
その目は、悲しみとも、安堵ともつかない、不思議な色をたたえていた。
「ダリィ!!!」
絹を裂く悲鳴のような呼び声が森に響いた。それが綾音のものだということは薄っすらと分かったが、目の前の光景があまりにも非現実的すぎて私の思考は止まってしまっていた。
お姉ちゃん・・・?
なんで?
一瞬の内に、過去から今までの姉との思い出が頭の中を駆け巡った。
いつも一緒にいた姉。
鏡写しのように、同じ顔の姉。
何かをするときにはいつも私より先にやって、
それで、大丈夫そうと思ったら私にやらせて・・・
そうだ・・・そうだった・・・
その姉が、目の前で倒れた。
「早く!止血を!」
「本部に連絡をするのです」
「早く、早く!!」
辺りで陰陽師たちが騒いでいる。
その喧騒をよそに、私はふらふらと姉に歩み寄っていた。辺津鏡を取り落とし、戦う意志はとうに削がれていた。
「お姉ちゃん・・・?」
天狐は自ら刺した槍を引き抜くことができなかった。それはそうだろう。今、引き抜けば出血多量でショック死するのは目に見えている。横抱きに抱いて回復用の妖術を使っているようだが、腹に獲物が刺さったままではその効果も限定的だろう。
私がかくんと膝をつくと、私の顔を見て、姉がゆっくりと手を伸ばしてきた。その指が私の頬にそっと触れる。
「よ・・・かった・・・水有が死なないで」
姉が小さく言葉を紡いだ。
良かった・・・?
一体それは・・・
「ご・・・めん、水有・・・私・・・あなたが死ぬ未来を見てしまったの・・・」
触れた手の体温が冷めていく。まるでそこに通う命の火が消えつつあるように。私は自らの手を頬に寄せ、姉の手に重ねていた。そんなことをしても、もう温まりっこないのに、だ。
「ごめん、水有・・・私、あなたに嫉妬して・・・それで、それで・・・」

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