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天狐あやかし秘譚
第127章 有為転変(ういてんぺん)
「閃!」

ダリが古槍の石づきをトンと地面に軽く打ち立て、短い呪言を唱える。刹那、槍の穂先からまばゆいばかりの光があふれ出した。

「な・・・何を!?」

周囲がカメラのフラッシュの何倍もの閃光に染まる中、私にまとわりついていた視線の気配が消える。やっぱり・・・予想通りだ!

ガキン!とまた金属が打ち合う音がしたところを見ると、すでに洗脳を受けている御九里には効果がないようだったが、キヌギヌが洗脳を施そうとしていた私への術を解除することには成功したらしい。

これが1つ目の辺津鏡への対抗策だった。

帰還した宝生前からの情報から、辺津鏡はその支配術を発動する際に、相手に夢を見せることが分かっていた。一旦夢を見終わってしまうと、その後はものの数秒で洗脳状態に陥ってしまうらしいが、最初はそれなりの時間が必要だというのだ。

そしてその、最初の夢幻状態に入れるためのキーが『視線』なのではないかと推測したのだ。だからこそ、閃光で邪魔できると考えたわけだ。

案の定、今、私は洗脳をされていない。やっぱり・・・この方法なら、ダリ以外も守れるのだ。

「綾音さん!」
御池が声をかけてくる。私はその声を頼りに、地面を蹴って、とにかく彼女の方に走った。

「させないわ・・・御九里っ!」
鋭くキヌギヌの声が響く。相変わらず、どこにいるかはわからない。それの聞こえる方角が特定できないというのは、なんとも不気味な体験だった。
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