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天狐あやかし秘譚
第117章 献身奉仕(けんしんほうし)
☆☆☆
父の・・・というか、家の状況は更に悪くなる。怒鳴り合いだけだった母との喧嘩のときにも、父は手を上げるようになった。きっかけは多分、母が『仕事を探したらどうか』と言ったことだったと思う。
それはそうだ。このときの私たちはジジの死をきっかけに長年住んでいた家を追い出され、狭いアパートぐらしをしていたのだ。収入は母のパートのみで、貯金を切り崩して生活している状態だった。
私と水有がアルバイトをするという話もあったが、それは父の強硬な反対にあっていた。そんな中、母が父に言ったのだ、
『そろそろ職を探してほしい』
と。
その日は黙っていたが、その後、なにかにつけて父は母に辛く当たるようになった。大抵そんな時は酒を飲んでいた。母に初めて手を上げたのは私たちが高1の6月初旬だった。暴力はエスカレートしていき、水有はますます家に寄り付かなくなった。
『今日も友だちのところに泊まってくる』
そんなふうにいいながら、出ていっていた。男友達のところだということは、風の噂で私も知っていた。
母は殴られた傷が目立たないように必死に化粧で隠していた。パートの時間を長く取り、可能な限り収入を多くしようとしていた。私はそんな家族のために自然と食事を作る役になっていった。
こんな環境だったので、自然と私は飲んだくれる父と同じ部屋にいることが多くなる。さすがの父も私や水有には暴力は振るわなかったが、家の中で千鳥足で歩き、時折トイレで吐瀉する父を見るのはとてもつらいことだった。
しかし、地獄の底は、更に下にあった。
あれは一学期の期末試験が終わり、試験休みに入ったときのことだった。水有は相変わらず家を明けていた。母もいなかった。昼過ぎに無精ひげを生やした父が起き出してきたので、私は努めて明るい口調で声をかけた。
「お父さん、昼ごはん食べるでしょ?」
父が虚ろな目で私を見てきた。そこに今まで見たことがない色の光を見て、私は心底ゾッとしたことを覚えている。頬が落ちくぼみ、髪の毛もボサボサ、皮膚もカサついて生気がない中、目だけがギラギラとしていたのだ。
それが、淫欲の光だということを、私はあとから知ることになる。
父の・・・というか、家の状況は更に悪くなる。怒鳴り合いだけだった母との喧嘩のときにも、父は手を上げるようになった。きっかけは多分、母が『仕事を探したらどうか』と言ったことだったと思う。
それはそうだ。このときの私たちはジジの死をきっかけに長年住んでいた家を追い出され、狭いアパートぐらしをしていたのだ。収入は母のパートのみで、貯金を切り崩して生活している状態だった。
私と水有がアルバイトをするという話もあったが、それは父の強硬な反対にあっていた。そんな中、母が父に言ったのだ、
『そろそろ職を探してほしい』
と。
その日は黙っていたが、その後、なにかにつけて父は母に辛く当たるようになった。大抵そんな時は酒を飲んでいた。母に初めて手を上げたのは私たちが高1の6月初旬だった。暴力はエスカレートしていき、水有はますます家に寄り付かなくなった。
『今日も友だちのところに泊まってくる』
そんなふうにいいながら、出ていっていた。男友達のところだということは、風の噂で私も知っていた。
母は殴られた傷が目立たないように必死に化粧で隠していた。パートの時間を長く取り、可能な限り収入を多くしようとしていた。私はそんな家族のために自然と食事を作る役になっていった。
こんな環境だったので、自然と私は飲んだくれる父と同じ部屋にいることが多くなる。さすがの父も私や水有には暴力は振るわなかったが、家の中で千鳥足で歩き、時折トイレで吐瀉する父を見るのはとてもつらいことだった。
しかし、地獄の底は、更に下にあった。
あれは一学期の期末試験が終わり、試験休みに入ったときのことだった。水有は相変わらず家を明けていた。母もいなかった。昼過ぎに無精ひげを生やした父が起き出してきたので、私は努めて明るい口調で声をかけた。
「お父さん、昼ごはん食べるでしょ?」
父が虚ろな目で私を見てきた。そこに今まで見たことがない色の光を見て、私は心底ゾッとしたことを覚えている。頬が落ちくぼみ、髪の毛もボサボサ、皮膚もカサついて生気がない中、目だけがギラギラとしていたのだ。
それが、淫欲の光だということを、私はあとから知ることになる。

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