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天狐あやかし秘譚
第110章 機略縦横(きりゃくじゅうおう)
「4人の子は必死に競い合った。
 だが能力の差は明確だったようだ。
 中でも朔弥はずば抜けていたらしい。」
「見るからに時弥はダメっぽかったですよね」
「いや、そうでもないみたいだ。あんなホストみたいななりしていたけれども、仕事には厳しく、和弥とはそこそこ張り合っていたらしい。ただ、問題なのは・・・」
「朔弥・・・だった?」
「そう、だからさ」

西園寺様がスペードのエースを一枚テーブルの上に置く。
その横に、クラブのジャック、更にその隣に再びジョーカーを置いた。

「普通に勝負しても敵わないと悟った時弥は和弥と朔弥、二人同時に抹殺しようと考えたわけだ。
 当然、自分の鬼の力で二人を直接殺すことも考えただろう」

ジョーカーでスペードのエースと、クラブのジャックをちょんちょん、と叩く。

「でも、鬼の力を使いすぎれば、それだけ足がつくリスクが上がる。
 だから彼は考えたんだ。
 一番少ない力で争いに勝つ方法・・・『鬼の印』を使うことをね」

ジョーカーをジャックの上に置く。

「鬼の印を和弥につけ、彼を操って朔弥を殺させる。
 ちょうど朔弥が一位、和弥が二位だったから具合がいい。
 世間的には遺産相続を巡る殺人事件として処理されるだろう。」

ジョーカーとジャックを重ね、それでスペードのエースを叩く。
そのまま、エースとジャックを場の外にポイと投げ捨てる。

最後にはジョーカーが場に残る・・・というわけだ。

「でも、それを西園寺様が華麗に見抜かれた!」

私は崩れたトランプタワーから『ダイヤのジャック』を拾い上げると、ジョーカーの上にピシャリと置いた。

「これでジョーカーは退場。
 和弥は裁判で心神喪失を主張するつもりみたいだからまだしも、
 時弥は相続競争から完全に脱落。
 ・・・じゃあ、勝者はやっぱり朔弥・・・なのでしょうか?」

スペードのエースが再び場に返り咲いた。

「いや、もう一人いるだろう?」

西園寺様がハートのクイーンをひらりと振って見せた。

「え?和羽・・・ですか?」
「・・・勝者は和羽だ」

ええええ!!

私は驚きの声を上げた。
「な、なんでなんで!?
 だって、和羽は売上4位で・・・
 あ?隠し玉ってやつ!?」
「まあ、隠し玉って言えばそうかもしれない。
 でもそれは意外なところからのものだったんだよ」
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