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天狐あやかし秘譚
第106章 形勢逆転(けいせいぎゃくてん)
☆☆☆
一方、階段を駆け上がった九条は、その強靭な体力によってあっという間に橋本がいると思しきフロアに到着しようとしていた。
先程から不規則にドゴン、ドン!ドゴっ!となにかを強く叩くような激しい音が響いていた。九条が意識を集中し、白鷺姫の視野にチューニングをすると、二つの黒い影のようなものがマンションの一室の扉の前でもみ合っているのが見て取れた。
九条が螺旋状の階段を登りきり、踊り場から廊下に飛び出すと、数m先に式神が見たのと同じ光景が広がっていた。
二人の女がもみ合っている。
そのうちのひとり・・・こちらを向いている方は、血糊がベッタリとついた白いワンピースのような服を身に着けた女。その肌色は異様に青白く、チラチラと見える顔は目の部分がちょうど穴をうがったようにポッカリと黒い洞になっていた。
明らかに怪異だ。
じゃあ、それともみ合っているのは・・・?
まさか!?
九条はあまりにも信じ難い光景に、思わずその場に足を止めた。
そこで怪異に相対して、正に『物理的に』取っ組み合っている人物、それは・・・
「なんてことだ・・・黒咲!?」
怪異が、そのギラリと光る長い爪を持つ右腕を振り下ろそうとするのを、黒咲がガッチリと己の左腕でガードしている。
「ぐぎいぃいいいぎいいい!」
黒咲は歯を食いしばり、奇声を上げ、右腕で怪異の喉笛を握りつぶさんばかりに鷲掴みにしている。その形相たるや、鬼神のごとくである。これではどちらが怪異か分からない。
「しゃあああっ!!」
ただ、怪異の方も負けてはいない。その身体を思いっきりひねると、空いていた左手で強引に黒咲の身体を押しのけようとする。
ドゴン!
その勢いに、黒咲の身体がマンションの鉄扉に激しく叩きつけられ、周囲に大きな音が響き渡った。先程から響いていた怪音はこれだったのである。
・・・・・
いったい、何が起こっているんだ!?
長く陰陽師をやっているが、素人が、しかも素手で、あからさまな呪霊と渡り合っているのを九条は初めて目の当たりにした。
「渡さない・・・わた・・・渡さない、あなたなんかに、あなたなんかに・・・」
呪言のように黒咲の口から紡がれる言葉。それは歪んでいるとは言え、橋本への深い思いがこもった言葉だった。
一方、階段を駆け上がった九条は、その強靭な体力によってあっという間に橋本がいると思しきフロアに到着しようとしていた。
先程から不規則にドゴン、ドン!ドゴっ!となにかを強く叩くような激しい音が響いていた。九条が意識を集中し、白鷺姫の視野にチューニングをすると、二つの黒い影のようなものがマンションの一室の扉の前でもみ合っているのが見て取れた。
九条が螺旋状の階段を登りきり、踊り場から廊下に飛び出すと、数m先に式神が見たのと同じ光景が広がっていた。
二人の女がもみ合っている。
そのうちのひとり・・・こちらを向いている方は、血糊がベッタリとついた白いワンピースのような服を身に着けた女。その肌色は異様に青白く、チラチラと見える顔は目の部分がちょうど穴をうがったようにポッカリと黒い洞になっていた。
明らかに怪異だ。
じゃあ、それともみ合っているのは・・・?
まさか!?
九条はあまりにも信じ難い光景に、思わずその場に足を止めた。
そこで怪異に相対して、正に『物理的に』取っ組み合っている人物、それは・・・
「なんてことだ・・・黒咲!?」
怪異が、そのギラリと光る長い爪を持つ右腕を振り下ろそうとするのを、黒咲がガッチリと己の左腕でガードしている。
「ぐぎいぃいいいぎいいい!」
黒咲は歯を食いしばり、奇声を上げ、右腕で怪異の喉笛を握りつぶさんばかりに鷲掴みにしている。その形相たるや、鬼神のごとくである。これではどちらが怪異か分からない。
「しゃあああっ!!」
ただ、怪異の方も負けてはいない。その身体を思いっきりひねると、空いていた左手で強引に黒咲の身体を押しのけようとする。
ドゴン!
その勢いに、黒咲の身体がマンションの鉄扉に激しく叩きつけられ、周囲に大きな音が響き渡った。先程から響いていた怪音はこれだったのである。
・・・・・
いったい、何が起こっているんだ!?
長く陰陽師をやっているが、素人が、しかも素手で、あからさまな呪霊と渡り合っているのを九条は初めて目の当たりにした。
「渡さない・・・わた・・・渡さない、あなたなんかに、あなたなんかに・・・」
呪言のように黒咲の口から紡がれる言葉。それは歪んでいるとは言え、橋本への深い思いがこもった言葉だった。

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