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天狐あやかし秘譚
第106章 形勢逆転(けいせいぎゃくてん)
☆☆☆
「ダメだ、電話に出ない!」
九条はスマホの画面を見て、苦い顔をした。普段、あまり表情を崩さない彼がそのような顔をするのは珍しいことだと明咲は感じた。
「あ!運転手さん!そこで止めて!」
窓越しに目的地であるマンションを認めた九条が、突然声をかけたものだから、タクシーの運転手は慌ててブレーキを踏むことになった。目指していたマンションは昭和感のある古い作りのマンションで、道に面した廊下の部分が外から丸見えの構造である。その7階辺りにパタパタと数羽の白い鳥・・・九条の式神、白鷺姫が羽ばたいているのが見える。
タクシーのドアが開くと、弾かれたように彼は外に飛び出していき、それを追いかけるように、隣に座っていた明咲も車を降りる。
「ああ!お客さん!お釣り、お釣り!」
運転手の声を聞いて、一瞬、明咲は足を止めるが、すぐに九条の方を振り返ると、タクシーに向かって『取っておいてください!』と言い捨て、走り出した。
九条の目はマンションの上空を舞う白鷺姫に注がれている。
「九条様!」
「明咲ちゃん・・・まずい、やっぱりもう来てるみたいだ!君はここで・・・」
そこまで言いかけた時、ドゴン!と大きな音がした。二人は顔を見合わせる。
「来てるのは怪異だけじゃないみたいだ。明咲ちゃんはここで待機して警察を呼んで。」
「九条様は!?」
「大丈夫・・・止めてみせる」
そう言い残すと九条はマンションの階段に飛び込んでいった。エレベーターはあるはずなのだが、走ったほうが早いと踏んだようだった。
「九条様!」
明咲も追いすがろうとするが、九条の命令を無視するわけにもいかない。とりあえず自分の持っているスマホで警察に110番通報をすると、念の為、経過報告として陰陽寮にも電話をかけた。これで、一応彼女はその役を十分に果たしたことになる。
待機と言われたけど・・・
しかし、その心中は穏やかではなかった。九条があれほど慌てなければいけないのは自分の責任だ・・・そう思っていたからだ。結局、少し逡巡した明咲は、腰につけていたポーチから鏢を取り出していた。
「ダメだ、電話に出ない!」
九条はスマホの画面を見て、苦い顔をした。普段、あまり表情を崩さない彼がそのような顔をするのは珍しいことだと明咲は感じた。
「あ!運転手さん!そこで止めて!」
窓越しに目的地であるマンションを認めた九条が、突然声をかけたものだから、タクシーの運転手は慌ててブレーキを踏むことになった。目指していたマンションは昭和感のある古い作りのマンションで、道に面した廊下の部分が外から丸見えの構造である。その7階辺りにパタパタと数羽の白い鳥・・・九条の式神、白鷺姫が羽ばたいているのが見える。
タクシーのドアが開くと、弾かれたように彼は外に飛び出していき、それを追いかけるように、隣に座っていた明咲も車を降りる。
「ああ!お客さん!お釣り、お釣り!」
運転手の声を聞いて、一瞬、明咲は足を止めるが、すぐに九条の方を振り返ると、タクシーに向かって『取っておいてください!』と言い捨て、走り出した。
九条の目はマンションの上空を舞う白鷺姫に注がれている。
「九条様!」
「明咲ちゃん・・・まずい、やっぱりもう来てるみたいだ!君はここで・・・」
そこまで言いかけた時、ドゴン!と大きな音がした。二人は顔を見合わせる。
「来てるのは怪異だけじゃないみたいだ。明咲ちゃんはここで待機して警察を呼んで。」
「九条様は!?」
「大丈夫・・・止めてみせる」
そう言い残すと九条はマンションの階段に飛び込んでいった。エレベーターはあるはずなのだが、走ったほうが早いと踏んだようだった。
「九条様!」
明咲も追いすがろうとするが、九条の命令を無視するわけにもいかない。とりあえず自分の持っているスマホで警察に110番通報をすると、念の為、経過報告として陰陽寮にも電話をかけた。これで、一応彼女はその役を十分に果たしたことになる。
待機と言われたけど・・・
しかし、その心中は穏やかではなかった。九条があれほど慌てなければいけないのは自分の責任だ・・・そう思っていたからだ。結局、少し逡巡した明咲は、腰につけていたポーチから鏢を取り出していた。

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