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天狐あやかし秘譚
第97章 【第19話:地狐】温慈恵和(おんじけいか)
☆☆☆
「ちょっと、あんた何なのよ!」

先程の失言をなんとか誤魔化し、母に食事をとらせて風呂に入れ、和室で就寝させた後、私はリビングで謎の狐少女に詰め寄っていた。どう考えても、普通の存在ではない。そもそも母に、彼女は見えてない。

一体どこから来たのか?母とどんな関係なのか?何を考えているのか?

いろんな疑問が頭をよぎる。

「あのぉ・・・私にも先程のおうどんをいただけると大変ありがたいのですが・・・」
もじもじと私の方を上目遣いに見つめてくる。ついでにこれみよがしに彼女のお腹あたりからグ、グーッという低い音が聞こえてくる。

うっ・・・そ、そんな目で見つめられたら・・・

うるうるとした目で見つめられ、つい絆されてしまった私は、おうどんを茹で、多分これが一番の目的なのだろう、ダリ用に買ってあったお揚げも2枚、入れてやる。

「はわわわわわわ・・・!」

目をキラキラ輝かせ、にっこにこと微笑みながら、おうどんを受け取る謎の狐少女。ずずー、ずずーっと美味しそうにうどんを啜っていた。そして、喜んでいるという意思の現れなのだろう。尻尾が背中の向こうでぴっこぴっこと揺れている。このへんはダリとそっくりだ。

ダリの関係者なんだろうか?

ダリは先程、母に食事を出した前辺りから、寝室で清香ちゃん達を寝かしつけてくれていた。なので彼はこの狐少女を見ていないわけで、関係者かどうかも聞くことができていない。

んくんくんく・・・ぷはあっ!

狐少女はよほどお腹が減っていたのか、汁を一滴も残さずに飲み干していた。丼の向こうからは満面の笑顔。相当、満足したらしい。

「んで?あんたは一体何者なの?」

私は先程流された疑問を再び彼女にぶつけた。

「わたくしですか?・・・ああ!そうですね!貴女様は朱音殿の御息女でございますね!私は故あって貴女様を探してはるばる朱音殿と一緒に旅を・・・」

え?私を探して?

頭に疑問符が飛び交った、丁度その時、ガラリと寝室の扉が開いてダリが姿を現した。

「綾音よ・・・ご母堂も休まれたか?」

その浴衣姿のダリを見て、話の途中で狐少女は息を飲んだ。
目を見開き、その尻尾がぴるんと震える。

「あ・・・ああ・・・ああああっ!!!!」
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