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天狐あやかし秘譚
第77章 背水之陣(はいすいのじん)

あと20秒・・・
ー大丈夫・・・作戦通りにやれば、何があろうとも
あと10秒・・・
ー早く・・・早くしろ・・・クチナワ!
5、4、3、2、1・・・
「「爆ぜろ!」」
ドドドン!!
黄泉平坂の周辺がまるで絨毯爆撃を受けたかのように、地面が炸裂し、紅蓮の炎に包まれる。もし、この光景を上空から見ているものがいれば、黄泉平坂の石碑を中心とした半径500メートルほどが火の海になっているのが見えただろう。
その燃え盛る炎の中、小玉鼠の群れが地面を走り回り、跳ねるようにして炎をまとった猫の姿をした妖怪『火車』が何百匹と駆けずっていた。
あがる閃光の中、クチナワの人を食ったような下卑た声が響く。
「さあ!派手に行くぜ!!
鵺よ!雷獣よ!
この辺の奴ら、皆殺しにしろ!!」
先程まで星が瞬いていた空がにわかにかき曇り、虎の四肢に獣の身体、蛇の尾と猿の頭を持つ妖怪『鵺』が現れ、不気味な咆哮をあげる。鵺の声に反応して雲間が光り、雷が落ちる。落ちた雷は光るイタチのような動物に姿を変え、周囲の木々を燃やしはじめた。
雷から生まれる妖怪『雷獣』たちだった。
この盛大なファンファーレを合図に、カダマシはその形態を第2段階である『童子』に変えて大きく地面を踏み込む。
ー目的は敵を倒すことじゃねえ!
あの岩だ!
敵がクチナワの陽動に目がくらんでいる一瞬を突き、黄泉と現世を隔てている第一の関門・・・『千引の大岩』を破壊すること・・・
右拳を前、左手を引き、踏みしめた力を一気に右拳で炸裂させる。
「揺光(ようこう)っ!」
一瞬、カダマシの右拳が黄金色に光ったかと思うと、レーザーのような光弾が空を切り裂く。軌道上の空気は一瞬にしてプラズマ化し、暗闇に光の水脈を引いていく。
光の弾が鳥居をなぎ倒し、その奥にある三つある大岩の内の中央を打ち貫いた。
バシっ!
大岩の中央にヒビが入り、それが縦に裂け、崩れ落ちた。すると不思議なことに、その向こう側に暗い洞が現れた。本来、岩の向こう側は単なる森、であるにも関わらず、確かにその割れた岩の向こうには洞窟の入口がポッカリと穴を開いているのだ。
ーよし!黄泉平坂への入口が開いた!
カダマシはぐっと拳を握る。手元の時計は、今やっと10時45分25秒を指していた。奇襲は成功だ、とカダマシは判断した。
ー大丈夫・・・作戦通りにやれば、何があろうとも
あと10秒・・・
ー早く・・・早くしろ・・・クチナワ!
5、4、3、2、1・・・
「「爆ぜろ!」」
ドドドン!!
黄泉平坂の周辺がまるで絨毯爆撃を受けたかのように、地面が炸裂し、紅蓮の炎に包まれる。もし、この光景を上空から見ているものがいれば、黄泉平坂の石碑を中心とした半径500メートルほどが火の海になっているのが見えただろう。
その燃え盛る炎の中、小玉鼠の群れが地面を走り回り、跳ねるようにして炎をまとった猫の姿をした妖怪『火車』が何百匹と駆けずっていた。
あがる閃光の中、クチナワの人を食ったような下卑た声が響く。
「さあ!派手に行くぜ!!
鵺よ!雷獣よ!
この辺の奴ら、皆殺しにしろ!!」
先程まで星が瞬いていた空がにわかにかき曇り、虎の四肢に獣の身体、蛇の尾と猿の頭を持つ妖怪『鵺』が現れ、不気味な咆哮をあげる。鵺の声に反応して雲間が光り、雷が落ちる。落ちた雷は光るイタチのような動物に姿を変え、周囲の木々を燃やしはじめた。
雷から生まれる妖怪『雷獣』たちだった。
この盛大なファンファーレを合図に、カダマシはその形態を第2段階である『童子』に変えて大きく地面を踏み込む。
ー目的は敵を倒すことじゃねえ!
あの岩だ!
敵がクチナワの陽動に目がくらんでいる一瞬を突き、黄泉と現世を隔てている第一の関門・・・『千引の大岩』を破壊すること・・・
右拳を前、左手を引き、踏みしめた力を一気に右拳で炸裂させる。
「揺光(ようこう)っ!」
一瞬、カダマシの右拳が黄金色に光ったかと思うと、レーザーのような光弾が空を切り裂く。軌道上の空気は一瞬にしてプラズマ化し、暗闇に光の水脈を引いていく。
光の弾が鳥居をなぎ倒し、その奥にある三つある大岩の内の中央を打ち貫いた。
バシっ!
大岩の中央にヒビが入り、それが縦に裂け、崩れ落ちた。すると不思議なことに、その向こう側に暗い洞が現れた。本来、岩の向こう側は単なる森、であるにも関わらず、確かにその割れた岩の向こうには洞窟の入口がポッカリと穴を開いているのだ。
ーよし!黄泉平坂への入口が開いた!
カダマシはぐっと拳を握る。手元の時計は、今やっと10時45分25秒を指していた。奇襲は成功だ、とカダマシは判断した。

