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天狐あやかし秘譚
第76章 人面獣心(じんめんじゅうしん)
☆☆☆
緋紅は3時間ほど対の間で眠った後、閨の様子を見に行った。
そこには彼の予想通りの光景が広がっていた。

ミオはまだ眠っていた。
当然だ。つい先程には、老化が始まる限界ギリギリまで生命力を削られていたのだから。

彼女の股のあたりはぐっしょりと男の精液にまみれていた。それはこの女が、何度も何度も睡眠姦を受けたことを示していた。

そして、その横に目をやると、ミイラのようになって震え、喘いでいる裸の従者の姿があった。この男は、足玉を身に着けた意識のないミオに劣情を催して犯したのだ。自らの精液をたっぷりと「与え」ようとした。その結果がこれだ。
彼は、自らの寿命をも与えることになってしまったわけだ。

「残飯漁りにふさわしい末路ってところかな?」

緋紅がミオの腹に手を当てると、腹が薄ぼんやりと光り輝く。そのままズイと指を突っ込むと、抵抗なく体内に指が沈んでいった。しばらく腹の中をまさぐって手を引くと、そこには、例の不思議な光沢のある勾玉があった。満足げに笑うと、それを懐にしまう。

「おい!誰か!この女と・・・この汚い男を屋敷の外に捨ててこい」

声を上げると、新たな従者が二人、やってきた。それらはものも言わず、死にかけの男と、そして、ミオを回収していった。

あの愚かな従者の男はそのうち死ぬだろう。そして、女は自分が命じた通り、裸のまま屋敷の結界外の適当なところに放り出されることだろう。

女は助かるかもしれないし、野垂れ死ぬかもしれない。しかし、1%でも助かる見込みがある状況に『供物』を置くなど、これまででは考えられないことだった。

実際、彼自身、なぜ自分がこんな気まぐれを起こしたのか、よく理解はしていなかったし、深く考える気もなかった。

このときの彼の思いは、すでに次のこと・・・黄泉平坂をいかにこじ開けるか・・・、そこに向けられていたからである。
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