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天狐あやかし秘譚
第74章 比翼之鳥(ひよくのとり)

そんなことを思っているうちに、ギュッと、ダリの方から抱きしめてきた。左手だけだったけれども、熱い抱擁だった。その目に射すくめられたようになる。ピタリと私の目を見つめてくる。
その目を見たら、頭の中で考えていたことが全て、きれいに飛んでいってしまった。
「すまぬ・・・」
囁く彼の声が、優しく耳朶に触れる。私はそっと首を振った。
「聞いた・・・。御九里さんとか、村の人とか、誰も怪我しないように頑張ってくれたって・・・。私の方こそ、ごめんなさい。ダリに心配ばかり。」
遅ればせながら、私も彼の背中に手を回す。
温かい・・・身体。そして、ほのかに香る、甘い匂い。
額をぎゅっとその着物に押し付ける。それは次第に強くなる。
「こわ・・・かった・・・」
身体が弛んで、心が解けたら、急に怖くなってしまった。
そうだ、怖かったんだ。私。
カタカタと身体が震える。震える身体をダリがぎゅっと抱きしめてくれる。
夢の中で、あなたを忘れさせられてしまった時、すごく怖かった。ひとりで生きてきたのに、もう、あの時と同じにはなれないことを知った。
引き合うように唇が重なっていく。そのかすかな刺激だけで、とうとう私の目は、涙を押し留めておくことができなくなった。ぽろりと一筋。あとからもう一筋。
恐怖と、それから解放された安堵・・・そして、帰ってこられたという嬉しさと。色んな感情が一気に溢れてきてしまった。
「お願い・・・抱いて・・・」
もう、こらえることなんて、全然できなかった。恥ずかしいとか、そういうのは全くなかった。
一刻も早く身体を合わせたい。
あなたを体の奥で感じたい。
もっと、もっと深くに来てほしい。
もしかしたら、私は生まれて初めて、強く、本当に強く、情の交わりを『求めた』のかもしれない。こんな気持が自分の中から湧いてくることを、今まで私は知らなかった。
ダリが私のジャージを脱がそうとするのももどかしい。
あっさりと、自分から脱ぎ捨ててしまう。そして、ダリもまた裸になっていた。明かりは煌々とついたままなので、お互いの生まれたままの姿を目の当たりにする形だ。
抱きついて、胸を押し付ける。温かな素肌の感触の向こうに、確かなあなたの鼓動を感じる。固く筋肉質の身体を手のひらでさする。何もかもが、愛おしい。
その目を見たら、頭の中で考えていたことが全て、きれいに飛んでいってしまった。
「すまぬ・・・」
囁く彼の声が、優しく耳朶に触れる。私はそっと首を振った。
「聞いた・・・。御九里さんとか、村の人とか、誰も怪我しないように頑張ってくれたって・・・。私の方こそ、ごめんなさい。ダリに心配ばかり。」
遅ればせながら、私も彼の背中に手を回す。
温かい・・・身体。そして、ほのかに香る、甘い匂い。
額をぎゅっとその着物に押し付ける。それは次第に強くなる。
「こわ・・・かった・・・」
身体が弛んで、心が解けたら、急に怖くなってしまった。
そうだ、怖かったんだ。私。
カタカタと身体が震える。震える身体をダリがぎゅっと抱きしめてくれる。
夢の中で、あなたを忘れさせられてしまった時、すごく怖かった。ひとりで生きてきたのに、もう、あの時と同じにはなれないことを知った。
引き合うように唇が重なっていく。そのかすかな刺激だけで、とうとう私の目は、涙を押し留めておくことができなくなった。ぽろりと一筋。あとからもう一筋。
恐怖と、それから解放された安堵・・・そして、帰ってこられたという嬉しさと。色んな感情が一気に溢れてきてしまった。
「お願い・・・抱いて・・・」
もう、こらえることなんて、全然できなかった。恥ずかしいとか、そういうのは全くなかった。
一刻も早く身体を合わせたい。
あなたを体の奥で感じたい。
もっと、もっと深くに来てほしい。
もしかしたら、私は生まれて初めて、強く、本当に強く、情の交わりを『求めた』のかもしれない。こんな気持が自分の中から湧いてくることを、今まで私は知らなかった。
ダリが私のジャージを脱がそうとするのももどかしい。
あっさりと、自分から脱ぎ捨ててしまう。そして、ダリもまた裸になっていた。明かりは煌々とついたままなので、お互いの生まれたままの姿を目の当たりにする形だ。
抱きついて、胸を押し付ける。温かな素肌の感触の向こうに、確かなあなたの鼓動を感じる。固く筋肉質の身体を手のひらでさする。何もかもが、愛おしい。

