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淫夢売ります
第55章 斜陽の楽園:壊れる世界
慌てて後ずさろうとすると、いつの間にか今来たばかりの道はなくなっており、背後は壁になっていた。

とん・・・と背中に冷たいビルの外壁が突き当たる。

なんで・・・?どうして!?

頭が混乱し、足が震える。手先がスーッと冷たくなり、硬直したかのように動かなくなる。

「今・・・」

男が口を開いた。少しうつむき加減に、それでも、くぐもることなく、はっきりとした声で。

「今、お前は幸せなのか?・・・もし・・・」

言いながら、男が手を差し伸べるようにしてにじり寄ってくる。周囲の暗闇に圧迫されるような恐怖心がとうとう臨界点を超える。

「いやあああっ!!!」

それでも男は止まらない。ジリジリと近寄ってくる。目を見開き、そこから涙を流しながら私は、なんとかここから抜け出す方法を求めていた。

どうしたら・・・どうしたらいいの!?
彰吾・・・彰吾っ・・・助けてっ!!

『アヴァロンのカードは悪夢を打ち払うって言われているんだ』

瞬間、私の脳裏に彼の言葉が蘇る。

カード・・・アヴァロン・・・

『そこに持ってるじゃないか・・・さらら・・・さらら・・・気をしっかり持つんだ・・・』

はっと気がつくと、私は自身の右手がアヴァロンのカードを握りしめていることに気づいた。目の前の黒尽くめの男もどうやらそれに気づいたらしい。怯んだようにその歩みを止める。

これなら・・・っ!

私は目の前にカードを掲げた。まるでそれが退魔の札であるかのように。

「ここから出して!夢から・・・悪夢から目覚めさせて!!」

アヴァロン!!

ぎゅっと目をつぶったにも関わらず、不思議なことに私は手にしたカードから温かなオレンジの光が強く放たれるのを感じた。恐る恐る目を開くと、まるで夕暮れ時の陽光のような、そんな優しい光が周囲の闇を照らし出していた。

その光に当てられ、目の前の男は眩しそうに手を顔の前にかざし、ジリジリと後ずさっていく。

このカード・・・カードが私を守ってくれている・・・!?

私は更にカードを前にぐいと押し出した。お願い・・・彰吾・・・私を、私を守って!

この目の前の男。こいつが現れてから私の生活はおかしくなった。何かが狂い始めた。全部、全部・・・こいつのせい・・・こいつが悪夢の元凶・・・こいつを、追い出さなくては!
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