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淫夢売ります
第53章 斜陽の楽園:幸せな日常
よかった・・・人がいた・・・。

その人と同時にエントランスに飛び込む。まさか、ここまでは入ってこないよね?もし来たら、今目の前にいる女性に助けを求めよう・・・そう思った。

しかし、果たして後ろの不気味な影は、マンションまで入り込んでは来なかったのでほっとした。

後から思えば、ここで止めておけばよかったのだ。しかし、恐怖に負け、どうしても確かめたくなってしまったというのもあって、私は前の人がキーロックを解除している時、そっと表の様子を窺ってしまったのだ。

そして、見てしまった。
先程自分が曲がった角あたりに、黒尽くめの男性がすっと消えていくのを・・・。

「ひぃっ!」

瞬間、息を呑む。私の心臓がなにか冷たいものでぎゅっと握りつぶされたかのような感覚に襲われる。全身に冷水を浴びせられたようで、ゾワリと背中が粟立った。

叫び出さなかったのが奇跡だった。
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