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淫夢売ります
第41章 淫らな選択:違う電車
【淫らな選択】

いつもと同じ時間に退社し、同じ時間にホームに着き、同じ3両目の2番目の扉の前に向かったにも関わらず、そこにはたくさんの人だかりができていた。いつもと同じ時間に電車が滑り込んできたけれども、すでにその車両は満員で、更にぎゅうぎゅうと人々が押し寄せるように乗り込んでいった。
その様子を見て、とてもじゃないけれどもこの車両には乗れないと、私は一本電車を見送ることを決めたのだった。

事故でもあったのかな?

そう思って手元のスマホで調べてみたけれども、事故の情報はなかった。どうやら夜半にかけて激しい雨が降る、という予報のため、帰り道を急ぐ人が多いせいみたいだった。

「どうしよう・・・」

満員の人を乗せた電車を見送りながら、私はひとりごちした。あの電車に乗れないと、いつもの時間に家に帰れない。一応、見たいドラマはビデオをセットしてはあるけれども、やっぱりオンタイムで見たかったな・・・、そんな風に考えていた。

次の電車には、と思うが、次々と人がホームに降りてきて、瞬く間に一杯になる。この分だと、次の電車も満員必至だ。少しでも空いているところをと車両の後方に移動してみたが、結果は同じだった。空くまで待っていたらいつになるかわからない。

しょうがない・・・そう考えて、結局、次の電車に乗ることにした。

いつもと違う電車。
いつもと違う車両。

人並みに流されるようにして、私はぎゅうぎゅうと車内に押し込まれた。

私が勤務しているのは、恵比寿にオフィスがあるとある大手広告代理店の子会社。地元の友人や大学の友達は「さすが、時子ちゃんだね!」と褒めてくれたが、入れたのは地方議員をやっている親のコネのおかげだ。小中高とエスカレーター式の地元のお嬢様学校に入れたのも同じ。ついでに言えば大学は学校推薦枠で入ったわけで、私自身はそれほど優秀でもなんでもないのだ。

こんな風に、ずっと親がかりで生きてきた私だったが、大卒後、就職を期に、さすがに自立をしたいと言った。最初は渋っていた父だったが、「25までに結婚をすること」という条件付きで、やっと許可されたのだ。一人暮らしも花嫁修業の一環、ということで父としては納得したようだった。
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