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淫夢売ります
第31章 白の花園:開く扉

☆☆☆
「ただいま」
久しぶりの実家の匂い。父は相変わらず仕事で忙しいようで、土曜日だというのに家にいない。家の奥から母の呑気な声が聞こえる。
「裕美ちゃん〜、ドーナツあるわよ〜」
特段、ドーナツが食べたかったわけではないけれども、母に聞きたいことがあったので私は誘われるがままにダイニングに上がった。
「裕美ちゃん、おかえりなさい」
母はぼんやりとテレビを見ていたようだった。ちょうど家事が一段落したのだろう。妹の咲希は部活で出ているそうだ。
「あのさ、お母さん。私、2013年の7月って、まだ北王子小学校だったっけ?」
「なあに?帰ってきて早々・・・。そうねえ、2013年・・・あなたが小3のとき・・・そうね、あの年の夏にお父さんの転勤が決まっていたから夏休みに入った後引っ越したはず。まだ北王子小学校だったわね」
そうか、それなら7月18日というのは、引っ越す直前まで通っていた小学校の終業式の日あたりだろうな、と推測できた。
「ねえ・・・なんかその時、私に変わったことなかった?」
母は、食べなさいとばかりにミニドーナツを盛ったお皿をこちらによこす。そして、日本茶を淹れながら、上目遣いに考える。
「変わったこと?変わったことって?」
「うーん・・・わからないんだけど・・・なんか、事件があったとか」
そう、事件に巻き込まれて、それ以来記憶がない・・・とか。
そう思ったが、そんな事件はないというのだ。
ただ、母が急にそう言えば、と言い出す。
「変わったことと言えば、裕美ちゃん、泣いて帰ってきた事があったわね。初めてのお引越しだったからかしら?お友達と分かれるのが辛いのかなって思っていたけど」
「それって?いつ頃?」
「いつ頃・・・多分、終業式の直前・・・だったかしら?いや、そうそう、あなた毎日泣いて帰ってきてたわよ、そう言えば。覚えていないの?」
全く覚えていなかった。
北王子小学校に通っていた記憶は少しはあるけれども、友達の顔も断片的だし、ましてやそんな毎日のように泣いて帰ってくるほど別れがたい友達がいた・・・という記憶もない。
「私・・・誰と仲良かった?」
「わからないわね・・・覚えてないわ。あなたあんまり家にお友達連れてこなかったから。咲希ちゃんはよく連れてきてたけどね」
「ただいま」
久しぶりの実家の匂い。父は相変わらず仕事で忙しいようで、土曜日だというのに家にいない。家の奥から母の呑気な声が聞こえる。
「裕美ちゃん〜、ドーナツあるわよ〜」
特段、ドーナツが食べたかったわけではないけれども、母に聞きたいことがあったので私は誘われるがままにダイニングに上がった。
「裕美ちゃん、おかえりなさい」
母はぼんやりとテレビを見ていたようだった。ちょうど家事が一段落したのだろう。妹の咲希は部活で出ているそうだ。
「あのさ、お母さん。私、2013年の7月って、まだ北王子小学校だったっけ?」
「なあに?帰ってきて早々・・・。そうねえ、2013年・・・あなたが小3のとき・・・そうね、あの年の夏にお父さんの転勤が決まっていたから夏休みに入った後引っ越したはず。まだ北王子小学校だったわね」
そうか、それなら7月18日というのは、引っ越す直前まで通っていた小学校の終業式の日あたりだろうな、と推測できた。
「ねえ・・・なんかその時、私に変わったことなかった?」
母は、食べなさいとばかりにミニドーナツを盛ったお皿をこちらによこす。そして、日本茶を淹れながら、上目遣いに考える。
「変わったこと?変わったことって?」
「うーん・・・わからないんだけど・・・なんか、事件があったとか」
そう、事件に巻き込まれて、それ以来記憶がない・・・とか。
そう思ったが、そんな事件はないというのだ。
ただ、母が急にそう言えば、と言い出す。
「変わったことと言えば、裕美ちゃん、泣いて帰ってきた事があったわね。初めてのお引越しだったからかしら?お友達と分かれるのが辛いのかなって思っていたけど」
「それって?いつ頃?」
「いつ頃・・・多分、終業式の直前・・・だったかしら?いや、そうそう、あなた毎日泣いて帰ってきてたわよ、そう言えば。覚えていないの?」
全く覚えていなかった。
北王子小学校に通っていた記憶は少しはあるけれども、友達の顔も断片的だし、ましてやそんな毎日のように泣いて帰ってくるほど別れがたい友達がいた・・・という記憶もない。
「私・・・誰と仲良かった?」
「わからないわね・・・覚えてないわ。あなたあんまり家にお友達連れてこなかったから。咲希ちゃんはよく連れてきてたけどね」

