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The Bitch (ザ、ビッチ)
第8章 エピローグ  『わたしの好きに...』
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「あ、ううん…もぉ、そんな焦らないで…」

 わたしとその彼は、バーから直ぐ近くにあるビジネスホテルとは名ばかりのホテルの部屋に入った…
 すると彼は、部屋のドアを開けた途端、わたしを引き寄せ、抱き締めてきたのだ。

「まずは、そこに座って…」
 と、わたしは彼を制し、ベッドサイド下の床を指差す。 

「え…」
 そんな意味不明なコトバに、彼は戸惑いの目を向けてきた。

 それはそうだろう…
 誰だって部屋に入るなりベッドサイドの床に座れって言われたら、普通は訳が分からないはずである。

 だけど、これは、わたしには、クソビッチのわたしにとって…
 大切なひとつの儀式なのだ。

 だけど、普通は、理解してはもらえない…
 だから…
「うふ…まずは…おあずけ…よ...」
 と、少し、淫靡な声音の艶を効かせ、そう囁く。

「あ……え…う、うん…」
 するとその囁きに、彼は一転、目を輝かせた。

 彼はさっき云っていた…
『ビッチという店名に魅かれた…』と。

 ビッチ…それは、最悪な、性悪クソオンナ。

 そんなスラング的なコトバのオンナに魅かれるならば…
 彼は少なからずM、エムの気質の性癖を秘めているに違いなく。

 だから…
『まずは、おあずけよ...』
 そのわたしの囁きに…
 こうして目を輝かせ、いや、心震わせたのだと思われる。

 それは、そんな、エム的性癖嗜好の資質にほぼ、間違いなく…

「さあ………」
 わたしは、床に座っている彼の前に椅子を置き、座り、脚を、いや、ストッキング脚を組み…

「さぁ、舐めるのよ…」
 彼の目の前、口元に、ストッキング脚の爪先を伸ばし、いや、差し出していく。

 そう、ストッキング脚の爪先を差し出す…

 その行為は全てのストッキングフェチの男たちにとって唾嚥もの的な憧れといえ、それが、その爪先が目の前に、口元に、差し出されたのならば...
 間違いなく嬉々とした笑みを浮かべ、口に含み、舐め、しゃぶってくる筈なのである。
 
 つまりそれは『ストッキングラブ』という性癖の、わたしからの審査のテストであり…
『踏み絵』でもあり…
 そして、初めて寝る、抱かれる男への審査の基準でもあるのだ。

「ほらぁ…さあ…舐めるのよ…」

 わたしは…敢えて...

 冷たく云い放つ…

 彼の、エムの心を震わせる様に…


 

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