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The Bitch (ザ、ビッチ)
第7章 2024年3月17日日曜日
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「うわぁ悠里さん、それって負けじゃないですよぉ…」

「えっ?」
 わたしは麻耶さんが帰って直ぐに、そう必死に涙を堪え…
 ううん、実は泣きべそのままに彩ちゃんに電話をし、その勢いで彩ちゃんが来宅してくれ…
 今夜の、さっきまでの和哉と麻耶さんとの出来事の全てを…
 赤裸々に、ありのままに、そして自分の感情を交えながら語ったのだ。

 ちなみに今夜の彩ちゃんは…
『マッチングアプリ』で知り合った男性と初めてのデートだったのだが、わたしからの涙声の電話に慌ててデートを切り上げて、部屋に来てくれ、話しを聞いてくれていたのである。

 彩ちゃんは曰く…
『その男はタイプじゃなかったから…』
 と、言ってくれ、更に…
『そんな悠里さんの涙声を聞いてしまったら、何がなんでも駆けつけますからぁ』
 そうまで、優しい言葉を言ってくれた。

 そして…

「負けなんかじゃなんかないですよぉ...」

「えっ?」

「うん、いや、ようやく、普通の、ううん、フツーのオンナになったってことですよぉ…」

「普通のオンナ?」

「いえ、フツーのオンナですぅ」

「フツーの…」

「はい、普通の女はそこで泣いて、泣き叫んで、甘えて…誰かにまたすがるんですよぉ…
 でもぉ、悠里さんはちょっと違う…」

「え、ちょっと違うって?」

「必死に嗚咽を堪え…そしてまた…」

「………………」

「そしてぇ、またぁ、ビッチオンナに戻るって決めたんでしょうっ」

「え、あ、う、うん…」

 うん、そう…

 わたしは、和哉と別れ、また、ビッチなクソオンナに戻るんだ…
 もうオトコなんていらない、あ、いや、違う…
 もう…男は愛さない…
 って、確かに麻耶さんが帰った後に、そう心に誓った。

「だからぁ、それは、負けじゃないし、普通の女になったわけでもない訳でぇ…」
 彩ちゃんは、そう続けてくる。

 だけど、わたしには、イマイチ意味が分かりかねていた…

「普通の女と、フツーのオンナって?」

 だってわたしは和哉との別れに…堪え切れなくなって泣いたはず…なのに。

 それって普通の女とは違うのか?

 だから、わたしは悔しくて…
 自分が情けなくて…
 泣いたら負けって、必死に嗚咽を堪えた…

 だけどわたし的には、その時点で泣いたら…
 涙を溢したら…

 負けに等しい…のだが…




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