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The Bitch (ザ、ビッチ)
第7章 2024年3月17日日曜日
 50

「もう帰りなさい……ね…」
 
 そのわたしの言葉は…
 隠れている麻耶さんに対しての、この痴態の饗宴と、苦しみ、狂いの終わりの言葉。

 そして…
 わたしにとっても終わりの言葉。


『もう帰りなさい……ね…』

 それは和哉が帰ったら…
 和哉が部屋を出たら…
 もうわたしとの関係は終わり、終わりを意味するから。

 もう終わり…
 そうわたしは和哉を麻耶さんに譲る。

 大人のオンナ、女として引き、終わりにし、麻耶さんに譲る…
 その為のこの饗宴という対価の代償を麻耶さんの苦しみ、苦悩、狂いとして、大人ではないビッチなクソ女のメスのわたしに払ってもらったのだ。

 だから…

『もう帰りなさい……ね…』
 
 これで終わり。

「あ、は、はい…」
 和哉はそう返事をし、立ち上がり、ズボンのベルトを締め、身支度をし…
 ふと、わたしを見る。

 そして一歩、ニ歩とわたしに歩み寄り、スッと両手を伸ばして肩に触れ、抱き寄せてきて…
「ゆ、悠里さん、大好きっす」
 そう囁きながらキスをしてきたのだ。

 あ……
 このキスにわたしの心は一瞬にして、震え、揺れ、蕩ろけ、溶ろけ、融ろけてしまう。

「あ…か………」

 かずや…と名前を呼べなかった。

 わたしはその不意な和哉のキスに呆然と立ちすくみ…
 心を揺るがせながら、部屋を出ていこうとするその後ろ姿を見る、いや、見るしかできなかった。

「じゃ、またっす、おやすみなさいっす…」

 バタン… 
 そして和哉はそう言って、ドアの向こうへと消えていった。

「あ…か…………」
 わたしは呆然と見送り、立ち尽くす。

 あ、終わった、終わり…
 これで和哉とは終わったんだ…

 ガタン…
 後ろから不意に音がした。

 そう、引き戸の開く音が…

 まだ、完全には終わりではない…

 まだ…
 
 まだ、麻耶さんがいる…

 狂った麻耶さんが…

 まだいる…



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