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”She”
第1章 1
客席のほうから来店コールが響いて、僕は跳ね上がるように梨花さんから唇を離した。

梨花さんとのキスは甘くて、しびれるような心地がした。
溶け合うような感じ。今までに味わったことのない、ふわふわ体が昇っていくような。
心臓までドロドロになりそうだった。
もっと触れ合っていたかった。

キスのあとも梨花さんはとろんとした目で僕を見ている。
きっと梨花さんも僕と同じ気持ちなんだと直感した。

なのに、梨花さんはすぐに立ち上がって、とびだすように休憩室からでていってしまった。

「りかさん・・」
あっという間に更衣室にはいって、まもなく裏口からでていってしまった。

あと1秒早く、梨花さんが好きだって声にできていたら良かったのに。

がっかりして僕も店を出た。

店の裏口の扉を出て階段の上から駐輪場を見下ろすと梨花さんがいた。

白いノースリーブのワンピースに、肩までの髪は後ろにまとめてる。自転車のハンドルをもったポーズで僕を見上げた。

「梨花さん」

僕は呼び止めて駆け下りて、梨花さんの前に立った。
梨花さんはいつもより背が高い。厚底のスポサンのせいだ。だから顔が近い。


「さっきの続きがしたい」
と言おうとして言葉を飲んだ。エロにしか興味がないガキだとおもわれたくない。

「あなたが好きです」
人妻に向かっていきなりそんなふうに言えば、勘違いはなはだしい重たい男だと思われる。

「梨花さんとセックスしてみたい」却下。
「おっぱいみせて」違う、違う!!



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