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”She”
第1章 1
僕は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してふたを開け、部屋のシングルベッドに寝転んでぼんやりとテレビを眺め、梨花さんを想った。

物理的に距離を置けば梨花さんのことを考えなくて済む・・
そう思って他県まで来た。

それなのに暇さえあれば梨花さんと話したことや、彼女とのキス、抱きしめたときの感触を思い出してる。

むしろ知人のいないところにいるから、一人でしみじみ梨花さんのことを想う時間が増えてしまった。

そんな自分にがっかりしつつ、妄想によって元気になりそうな分身のほうに手を伸ばした。

結局俺、アパートにいた時と同じことをしてるな・・・

そのとき、ドアの向こうで声がした。なにか相談するような、ひそひそ声だけど、どことなく興奮したような高い声だ。なんだろう。

声がする場所があまりに僕の部屋のドアに近いから、僕は気になってそっとドアを開いた。

「あっ!」

ドアの向こうにいた人物が僕に気づいて小さな悲鳴を上げた。

「すいません、声が聞こえたもので・・・何かお困りですか」

僕は言った。顔を見ればそれはプールで会った女の子二人組だった。

「実は二人ともカードキーを部屋に置き忘れて、向かいの部屋なんですけど、入れなくなっちゃったんです」

向かいの部屋はツインルームなんだと言う。

僕は部屋の内線でフロントに電話し、スタッフを呼んであげた。しばらくするとまたのその女の子たちが部屋を訪ねて来た。

「さっきは助かりました。おかげで部屋にはいれました。ありがとうございました。これよかったら」

女の子のひとりが、土産物らしき取っ手付きの箱を差し出す。

ちょっとおしゃれな地元のクラフトビールの瓶、三本飲み比べセット。

箱を差し出している女の子はちょっとふっくらした小柄な女の子。色は白くて髪は肩までのセミロング。後ろに立っている女の子はほっそりとして背が高い。ぱっと見はどちらもおとなしそうなタイプだ。

このくらいのことで、お礼とかいいのに。
それに僕は酒に弱いから飲まないんだ。でも彼女たちの厚意を無下にするわけにはいかない。

お礼を言って受け取った。

視線を落とすと二人の服装が目に入った。小柄な女の子はフリルのついたミニドレス。ほっそりした子はパフスリーブのブラウスにミニスカートだった。夜遅いのにこんなお洒落を?

「お二人はこれからお出かけですか」
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