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ママ活
第8章 推しのママに宣戦布告?!


 …──そうではない。


「あの、さ、小川ちゃ……」

「社長。私、明咲ちゃんと同じ大学でした。ずっと好きだったから、全部、噂も聞いてきました」


 今度は佐和子が言葉を失くした。

 不器用な嘘もつけない彼女が、飲んだ覚えのない自白剤に操られでもしたようになる。


「認めるわ。明咲は私が脅迫した。別れてから四年近く、再会の時を待っていた」

 佐和子の腕が、明咲の腰に絡みつく。
 まるで愛する者に対するのに似た優しさで、その腕が、明咲を彼女に密着させる。


「ただ、私は悪いことしてない。亜純の件だって、伊本さんの一方的な嫉妬でしょう」

「何……っ」


 今に佐和子に噛みついてもおかしくない形相を見せたりなを、明咲と佳歩が止めに入った。

 再三、佐和子が口を開いた。


「謝るわ。その上で私は、二人に納得してもらう。チャンスをくれない?」


 佐和子の指摘と提案は、こうだ。

 佳歩もりなも、自分本位でしか物事を見ようとしていない。本物の快楽に溺れたこともなければ、消極的な意味で、自身を甘やかしたこともない。だからこんな型通りの倫理しか掲げられないのだ。


「ひと晩、休戦しましょう。ホテルでね。人間の善悪への先入観が、どれほど主観的か……参考にしてもらえるはずだわ」


 明咲は、弾かれるようにして佐和子に顔を向けた。


 ずっと救われたかった。だが人には、結局、絶対的な味方を見つけることなど出来ない。自分でさえ、自身を見捨てるしかなくなる場面に、生きていれば何度も直面するものだ。

 佳歩は、きっと変わっているだけ。

 いつも明咲を肯定して、無条件に好意を向ける。
 大学時分、面識もなかった同期にまつわる噂を聞いた時、代われるものなら代わりたかった。それほど同情していた、とまで打ち明けた。同情ではなく愛だった、と付け足して。


「小川ちゃん……」


 佐和子の強さと、脆さ。

 明咲の境遇に親身な思いをいだいていた、佳歩。

 彼女らのどちらが、明咲を救ってきたのだろう。







第8章 推しのママに宣戦布告?!──完──
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