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ママ活
第8章 推しのママに宣戦布告?!
 
 彼女がカウンターへ進み出た。


「お手数おかけして、すみません。この方、私のお客様で……」


 慇懃に頭を下げた彼女が顔を上げて、りなに目で合図した。


 本当に彼女が恋仇なら、何故、りなに助け舟を出したのか。
 何にせよ、この機会を逃しては、佐和子の顔も見られずに終わる。

 無言の促しに従って、りなは彼女に続いて奥へ進む。

 ひとけのない場所まで来ると、彼女が振り返ってきた。


「お節介でしたか?」


 存外に親しみやすい言葉つきだ。

 りなは、首を横に振る。



 女は、小川佳歩と名乗った。
 普段は見ず知らずの部外者が困っていても、通り過ぎる。だが今日は無性に気になって、つい割って入ったというのが、彼女の言い分だ。

 二人は休憩スペースのベンチに並んで、互いに自己紹介した。

 佳歩はやはりりなより三つ下で、新卒社員で職場環境は良好にも関わらず、佐和子には良い感情を持っていないらしい。不審な女の腹を探るための手管でもなさそうだ。


「それで、りなさんは?」


 化粧品売り場で客から要望を聞き出すくらいの軽さで、佳歩がりなに話を振った。

 それは、そうだ。
 用もなく、無関係のオフィスに足を踏み入れる人間はいない。


「口外はしないで欲しいんですけど……」


 恋愛的に好意を向けている相手が、古賀佐和子と私的な関係にある可能性が高い。
 彼女に対して本気か、道楽か、確かめなければ気が済まない。

 そこまで言葉に出してみて、りなは我に返った。

 佐和子に殴り込みしても、何も変わらないではないか。
 しかも、これで彼女達が少しでもまごころで繋がっていたとすれば、りなが完全に悪者だ。


「やっぱり帰ります。頭冷やしま──…」

「待ってください」


 佳歩の烈しい言葉つきが、りなを止めた。

 さっきまでの柔和な物腰は、見せかけだったのか。
 端麗な美女が、りなに同情を──…いや、共感に近いものを向けていた。
 
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