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ママ活
第6章 幸せにしてくれるのはママ?
 
* * * * * *

 佐和子は宮田と、行きつけのホテルのラウンジにいた。

 休日の昼時、フロアは賑わっている。
 そこかしこに漂う匂いが、適度に食欲を刺激する。

 佐和子達は、オードブルをつまみながら、ワインボトルを開けていた。
 シェアはしない。取り皿は真っ白だ。


 商談がひと段落ついて、佐和子が書類を片付けていると、宮田が気の抜けた顔に戻った。


「浮かない顏だな。美少年にでも振られたか?」

「美少女の姉に訴訟されそうなの」

「マジか」


 友人の窮地を他人事と見放しているのがよく分かる、宮田の口調。

 佐和子は二人の社員に同じメッセージを送ると、グラスに残った紫色の液体を飲み干した。


「万徳くんと、今で五年?よそ見もしないで、昔の貴方じゃ考えられない」

「愛の味を占めれば、よそ見なんか出来ないさ。第一、オレは抄に店を辞めさせた。あいつの稼ぎの補填くらいは、責任持つつもりだよ」


 派手に遊ぶ男に限って、真面目だ、と佐和子は思う。

 対して自分は、今も昔も臆病者だ。

 愛を求めず、愛から逃げた。


「私達、もう悪友じゃないのね。昔は、贔屓のキャストがよく被っていた。私の方が先に口説いて、貴方は悔しがってばかりで」

「佐和子の財力に見向きもしなかったのは、抄だけだ」

「貴方達、似た者同士だったのかな。万徳くんは、売上より、貴方ばかり見ていた。負けたわ」


 だのに宮田は万徳抄を選んだあとも、佐和子に恨みつらみを引きずっていた。


「何故、明咲を私に紹介したの?」

「君を異性愛者と思い込んでいたからだ。騙して、一度でも悔しがらせたかったんだよ」

「あんなに手の込んだことをして?」


 もはや度の超えた友情と解釈出来る。

 何より、宮田は経営者として凄腕だ。
 彼が正気だったなら、違法でも明咲を雇った方が、よほど利益になっただろう。


 宮田は、手前のつまみを口に運んだ。
 ワインを足して、急に腹でも空いた勢いで、牡蠣の燻製やハーブのチョリソーを口に投げ入れる。


「子供は、親を選べない」


 つと、独り言にも聞こえる呟きが、宮田の口をこぼれ出た。
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