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千一夜
第61章 第八夜 island 真相
「ママ、おやすみなさい」
 良輔と良幸が私にお休みの挨拶をした。
「良輔、良幸、おやすみなさい。二人ともゆっくり休んでね。喧嘩したらダメよ」
「ママ、僕は良幸を苛めたりしません」
「よし、良輔、さすがお兄ちゃんだ」
「パパ、僕もいい子だからね」
「ははは。わかったよ、良幸もお兄ちゃんに負けないくらいいい子だ」
 河田はそう言うと、良輔と良幸を連れて隣の部屋に向かった。二人が寝付くまで河田が、良輔と良幸の傍にいる。
 いつもはここで子供たちが学校や幼稚園での出来事を河田に話したりする。子供たちは河田に話しながら眠りの世界にすとんと落ちる。時間にして十分くらいだろうか、ただ今日は学校も幼稚園もないのでそんなに時間はかからないはずだ。
 良い父親で素晴らしい夫なのだが、私にはこれから河田との儀式が待っている。
 私は、小さなテーブルを部屋の隅に動かして布団を敷く。儀式の準備。翌朝、儀式の痕跡を消すのは河田の役目だ。
 五分経った頃、河田が私たちの部屋に戻って来た。
「ねぇ、これ見て頂戴」
 私は東京の空港で買った週刊誌を河田に見せた。
「週刊文〇、何だよこれ?」
「あなたの名前が出ていたから買ったの」
「僕の名前? おい、冗談じゃないぞ、僕は不倫なんかしていないからな」
「そんなんじゃないわよ。ここを見てよ。○○〇CFO河田良和VS〇ニーグループ財務最高責任者リー・アンジェラ。あなた、このリーとか言う人と喧嘩でもしているの?」
「……」
 河田は週刊誌を開いてその記事を読み始めた。記事を読み終わって河田が週刊誌を閉じた。
「どうなの?」
「馬鹿馬鹿しい」
「どういうこと?」
「出鱈目だよ。間違っていないのは、僕とそのリーとか言う人の名前だけだな。僕は取材を受けたことはないし、出版社からも連絡はない。憶測と誰かの願望でまとめられた大して面白くない作文だ」
「作文?」
「ふん」
 私は河田に仕事のことを訊ねたことはない。ただ一つだけ気になる事が週刊誌に書かれていた。
 〇ニーグループは、当初河田を財務の最高責任者に据える予定だったと言うのだ。しかし、土壇場でそれが覆された。覆したのは、河田が勤めていた外資系の銀行だと記事では言い切っている。
「これ本当のこと?」
「僕が〇ニーに行くと言うことか?」
「そうだけど」
「嘘だよ。〇ニーからのオファーがそもそもないんだ」
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