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千一夜
第61章 第八夜 island 真相
「ママ、パパもお兄ちゃんも待ってるよ。早く来てよ」
 良幸が風呂場を覗き込んで、湯舟に浸かっている私にそう言った。
「良幸、お願いだからもう少しだけゆっくりお風呂に入らせて、お願いだから」
「わかったよ。ママ、ごめんなさい」
「ありがとう、良幸」
 私がお風呂から出ると、二階の私たちの部屋でトランプをすることになっている。良輔も良幸も携帯ゲーム機は持ってきているが、なぜか良輔も良幸も島ではそれを出さない。島ではゲームより、四人でするトランプの方が楽しいようだ。
 横浜の家では夜の八時が良輔と良幸の休む時間と決めている。だが、家族旅行の間だけ、その時間が三十分延長される。
 私がお風呂に入った時間は七時過ぎくらいだったので、トランプのゲームを一回でも多くするために、私にお風呂から早く出てきて欲しいのだ。
 子供たちの気持ちがわからないわけではないが、私はのんびりと湯に浸かりたい。
 だが、母になるとそう言う気持ちに鞭を打って子供たちに寄り添う。母親とはそう言いものだ。
 風呂から上がり、二階の部屋に入ると小さな長方形のテーブルの上にトランプが置かれているのが見えた。三人はそのテーブルを囲んでいた。
「遅いよママ」
 腕組みをしてそう言ったのは良輔だ。
「三人でトランプしてればいいのに。ママがいなくてもできるでしょ」
「ママ、これは家族旅行なんです。トランプだって四人でするんです」
「わかりました。でも良輔、負けても文句言わないでね」
「僕は負けません」
 たかがトランプ、されどトランプ。オーソドックスのババ抜きでも七並べでも、勝負が掛かると、たとえ家族だけのゲームでも白熱してくる。
 私が河田と結婚してよかったと思うときがある。最後の最後で河田は勝ちを良輔や良幸に譲る。二人にわからないように必死さをアピールする演出も加えながら、河田は二人に勝たせる。
「よし時間だ。続きはまた明日だ。明日は家の前でラジオ体操するから寝坊するなよ」
 テレビはないが、ラジオはある。辛うじてNHKの電波だけは島に届けられている。
「えー、島でもラジオ体操するの?」
「もちろん」
「じゃあ、今日は上が良幸ね」
 良輔が言った上とは二段ベッドのことだ。
「お兄ちゃん、ありがとう」
「良輔、偉いぞ、さすがお兄ちゃんだ」
 こういうとき、河田は必ず子供を褒める。
 でも……。
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