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千一夜
第61章 第八夜 island 真相
「ママ。ママ、時間だよ。飛行機飛んじゃうよ」
 これは良輔の声……? それとも良幸の声……? 私はぼんやりしている頭の中で声の主を探した。
「ママ、雨が降ってるよ。起きてよ」
「ごめん、もう少しだけ、お願い」
「ダメ、ママ、チューするよ」
 チューするなんて言うのは良幸だ。
「今何時なの?」
「五時半かな」
 時間を正確に言ったのは良輔だ。
「五時半! だったらあと三十分だけ寝かせて」
「ダメ!」
 良輔と良幸の声が重なった。
「あと三十分だけ寝かせてくれって良輔の常套句だよな。それをママが使うなんて何だか可笑しいな」
「……」
 私は声の方に目だけやる。着替えを済ませた河田が腕組みをして私を覗き込んでいた。
 私は河田にこう言いたかった「あなた疲れてないの? 私は昨日の夜二時間もあなたに犯されたんだけど」と。
「あなたたち準備はもうできているの?」
「当たり前じゃん」
「良輔はこんなときだけ早起きなのよね。良輔、お願いだから毎日早起きしてよ」
「検討します」
 検討します……小学生が使う言葉ではない。いつの間にか良輔は河田が使う言葉を真似する。
「雨って、もしかしたら台風?」
 そんな予報が出てないことを私は知っている。
「ははは、台風は卵すらできていません。雨も小降り、風もそんなに強くないから飛行機が揺れる心配なし。もちろん、船も通常通りに運行されている」
「このホテル、朝食は七時からでしょ?」
「六時にしてくれと僕が頼んでおいた」
「朝食の時間を早くしても飛行機の時間は変わらないわよ」
「気分の問題だな」
「気分?」
「僕も良輔もそして良幸も心だけはもう島に向かっている」
「いつから良幸がそっちのグループに入ったのよ?」
「さぁ……いつだったかな」
 河田がとぼけた。
 仕方がないので私はベッドを出た。
「ママ、今日は三十分バージョンでお願いします」
「三十分バージョン? 良輔、それどういう意味?」
「お化粧の時間」
「私の?」
「そう、ママのお化粧の時間」
「良輔、あなたレディに失礼よ」
「ははは」
 河田が笑う。
「あなたも最悪」
「ごめんごめん。良輔、パパと一緒にママに謝ろう。いいな?」
「ママごめんなさい」
「僕も悪かった。許してくれ。ごめんなさい。よし、良輔も良幸もテラスでママを待とう」
「……」
 
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