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千一夜
第61章 第八夜 island 真相
「ママ、富士山が見えるよ。ねぇ見てよ」
 息子の良輔が、アイマスクをして眠りの中に潜り込もうとしていた私をそう言って起こそうとした。
「……」
 私には答える気力がない。
「見てって言ってるでしょ」
 反応のない私に腹を立てたのか、良輔は私のアイマスクを外そうとした。
「止めてよ、ママ眠いんだから」
「富士山を上から見るなんてラッキーじゃん。ママはバカだよ」
「何ですって!」
「良輔、ママに謝りなさい。ママをバカだなんて言うのはパパは絶対に許さない。わかったか?」
 河田が良輔にそう言った。
「ママ、御免なさい」
「ママはきっと疲れているんだ。飛行機が着くまでママが眠るの邪魔しちゃだめだ」
「はい」
 良輔は私より河田の言うことをきく。
「でもさ、僕とパパはママに譲歩したんだよね」
 良輔が声を小さくしてそう言った。声を小さくしたところで、隣に座っている私の耳には良輔の声が届く。考えたくないが、良輔はそれを知っててわざと声を小さくしたのかもしれない。
「だから今日一日ママに楽しんでもらうんだ。良輔もママの言うことをちゃんと聞くんだぞ。ママを怒らせちゃいけないからな」
「良幸もね」
 来年幼稚園に入園する良幸は、河田の隣の席で眠っている。
「そうだけど、良輔はお兄さんなんだから良幸のお手本にならないといけないぞ。いいな?」
「了解です」
 良輔はそう言うと、河田の方を向いて敬礼のポーズをとった。
「あなたたち私に嫌がらせをしているつもり? あなたと良輔の声が大きくて眠れないんですけど。それから良輔、今良輔が言った譲歩という言葉の意味わかって使っているの?」
「わかってますよ。だってパパが」
「ああ、もういいわ。ママのことを思うなら黙ってて頂戴。お願いします」
「ママ、了解です」
 譲歩という言葉を良輔に教えたのは河田だ。
 いつもなら一日かけて島に向かうのだが、今回は、○○本島で一泊する。島には翌日○○本島から飛行機に乗って○○島に、それからコバルトブルーの海を船で(二回)渡って河田と良輔の秘密基地(私は見たことがないが)がある島に向かう。
 台風の通り道のはずなのに、どういうわけか私たちが島に向かうときは台風が発生しない。誰かが台風が来ないように呪(まじな)いでもかけているのだろうか。
 呪い……。その言葉を思いついたとき、私は妙な感覚に覆われた。
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