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千一夜
第59章 第八夜 island 違和感
どんどん河田の世界に引き込まれていく。河田が意図して私を誘導しているのか、それとも生まれ持っての河田の才能なのか、私にはわからない。
波で揺れるボートの上から、釣り糸を海中に垂らしている河田を黙って見ているなんて私にはできない。
私のロッドがまだないとき。
「ねえ、五分だけそれを私に貸してくれない?」
「どうぞ」
河田は私のロッドを渡すと、使い方を簡単に説明した。聞いてはいたが、五分で私に釣られる魚なんて海にはいない(多分)。河田の話は右の耳から入ってすぐに左の耳から出て行った。
五分経過、案の定私の手にはヒットした感覚が伝わらなかった。海の魚はバカじゃない。彼ら(彼女ら)だって敵から身を守りながら命懸けで生きているのだ。
当たりはなかったが、五分は無駄ではなかった。
「私にもロッドを買ってちょうだい」
「OK!」
ハワイに別荘を買ってよと私が言っても、河田は間違いなく同じ返事をする。
しかし、大海原で河田が私に許してくれなっことが一つだけあった。
「私にも操舵させてよ」
「ダメです」
「どうして?」
「法律でそう決まってるから」
「誰も見てないわよ」
私はぐるりと辺りを見回してそう言った。海の上では渋滞がない(特殊な場合を除く)。もちろん煽り運転もない。追突事故なんて陸の上より圧倒的に少ない(はずだ)。
「それ、親の言う台詞じゃないんですけど」
「絶対にダメ?」
「絶対にダメです」
「ケチ」
「ははは」
「……」
河田をケチと呼ぶのは私くらいだ。
私はボートのステアリングホイールを握るために、河田と同じ小型船舶一級の免許を取得した。
自分の陣地に私を引き込むために、河田は私の手を掴んで無理やり引いているのではない。河田を見ていると、自然と自分もやってみたくなるのだ(おそらくこう感じるのは私だけではないはずだ。特に結婚している夫婦であれば)。
だが、一つだけ受け入れられないものがある。困ったことに、それは年に一度の我が家の行事になった。何度も何度も私が嫌だと言っても、河田は私に耳を貸してくれない。それどころか河田は私にこう言うのだ。
「あそこはね、地上の楽園なんだよ。幸いなことにあの島はまだ誰にも知られていない。海が綺麗だろ? 行かなかったら人生が無駄になる」
碧海にポツンと浮かぶ小さな島。
今年もまたあの島に行く。
波で揺れるボートの上から、釣り糸を海中に垂らしている河田を黙って見ているなんて私にはできない。
私のロッドがまだないとき。
「ねえ、五分だけそれを私に貸してくれない?」
「どうぞ」
河田は私のロッドを渡すと、使い方を簡単に説明した。聞いてはいたが、五分で私に釣られる魚なんて海にはいない(多分)。河田の話は右の耳から入ってすぐに左の耳から出て行った。
五分経過、案の定私の手にはヒットした感覚が伝わらなかった。海の魚はバカじゃない。彼ら(彼女ら)だって敵から身を守りながら命懸けで生きているのだ。
当たりはなかったが、五分は無駄ではなかった。
「私にもロッドを買ってちょうだい」
「OK!」
ハワイに別荘を買ってよと私が言っても、河田は間違いなく同じ返事をする。
しかし、大海原で河田が私に許してくれなっことが一つだけあった。
「私にも操舵させてよ」
「ダメです」
「どうして?」
「法律でそう決まってるから」
「誰も見てないわよ」
私はぐるりと辺りを見回してそう言った。海の上では渋滞がない(特殊な場合を除く)。もちろん煽り運転もない。追突事故なんて陸の上より圧倒的に少ない(はずだ)。
「それ、親の言う台詞じゃないんですけど」
「絶対にダメ?」
「絶対にダメです」
「ケチ」
「ははは」
「……」
河田をケチと呼ぶのは私くらいだ。
私はボートのステアリングホイールを握るために、河田と同じ小型船舶一級の免許を取得した。
自分の陣地に私を引き込むために、河田は私の手を掴んで無理やり引いているのではない。河田を見ていると、自然と自分もやってみたくなるのだ(おそらくこう感じるのは私だけではないはずだ。特に結婚している夫婦であれば)。
だが、一つだけ受け入れられないものがある。困ったことに、それは年に一度の我が家の行事になった。何度も何度も私が嫌だと言っても、河田は私に耳を貸してくれない。それどころか河田は私にこう言うのだ。
「あそこはね、地上の楽園なんだよ。幸いなことにあの島はまだ誰にも知られていない。海が綺麗だろ? 行かなかったら人生が無駄になる」
碧海にポツンと浮かぶ小さな島。
今年もまたあの島に行く。

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