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千一夜
第45章 第七夜 訪問者 戦い
後日、ボールを盗んだ四人の生徒が謝罪するため遠山機械工業にやってきた。総務部は会長にそれを報告した。咲子の父は四人を会長室に呼んだ。四人は総務部の部長、課長、そして係長と共に会長室に入った。
遠山高獅は四人にこう訊ねた。
「学校の先生から謝りに行けと言われたのか?」
と。
四人の生徒は自分の意志で謝罪に来たことを咲子の父に言った。
「野球場に行くか」
咲子の父は四人にそう言った。
遠山ベースボールパークのバックネット裏に咲子の父と四人の生徒が座った。傍には総務部の部長たちだけでなく、秘書課の人間、施設管理長らを含めて十名が立っていた。
グランドでは夜間練習の前のグランド整備が行われている。
「君たちは野球が好きか?」
咲子の父は四人にそう訊ねた。四人は首を縦に振った。
「愛しているか?」
四人は答えなかった。
「君たちは野球を愛しているのか?」
「はい、愛してます」
四人は声をそろえてそう答えた。
「君たちは野球を冒涜した。野球に泥を塗った。そういう自覚はあるか?」
咲子の父はグランドを見つめながらそう続けた。
「すみませんでした」
「だったら君たちはこれからどうする?」
「……」
四人は下を向いたまま答えない。
「野球に顔向けできないようなことは二度とするな!わかったか!」
「すみませんでした」
四人は席を立って咲子の父に頭を下げた。
「私に謝るんじゃなくて野球に謝れ!グランドに向かって頭を下げろ!」
「すみませんでした」
グランドの整備をしていた三人の老人たちの目が、バックネット裏に向かった。老人たちの目に、グランドに向かって頭を下げている四人の生徒が映った。ただ、四人の生徒の頬に流れている涙は見えなかった。
「聞こえたか?」
遠山が四人にそう言うと,、四人は立ったまま咲子の父の方に体を向けた。
「野球の神様は君たちを許してくれたか?」
「聞こえませんでした」
四人の中で一番身長の高い生徒がそう言った。
「許す!」
咲子の父は大きな声でそう言った。そしてこう続けた。
「私にはしっかり聞こえた。君たちは許された。いいか、よく覚えておけ。悪は隙を見せると人の心に纏わりつく。悪とは手を握るな。悪を断ち切る強い心を持て。下を向き続けなければならないような人生を送るな。わかったな?」
「はい」
四人の返事は綺麗にそろった。
遠山高獅は四人にこう訊ねた。
「学校の先生から謝りに行けと言われたのか?」
と。
四人の生徒は自分の意志で謝罪に来たことを咲子の父に言った。
「野球場に行くか」
咲子の父は四人にそう言った。
遠山ベースボールパークのバックネット裏に咲子の父と四人の生徒が座った。傍には総務部の部長たちだけでなく、秘書課の人間、施設管理長らを含めて十名が立っていた。
グランドでは夜間練習の前のグランド整備が行われている。
「君たちは野球が好きか?」
咲子の父は四人にそう訊ねた。四人は首を縦に振った。
「愛しているか?」
四人は答えなかった。
「君たちは野球を愛しているのか?」
「はい、愛してます」
四人は声をそろえてそう答えた。
「君たちは野球を冒涜した。野球に泥を塗った。そういう自覚はあるか?」
咲子の父はグランドを見つめながらそう続けた。
「すみませんでした」
「だったら君たちはこれからどうする?」
「……」
四人は下を向いたまま答えない。
「野球に顔向けできないようなことは二度とするな!わかったか!」
「すみませんでした」
四人は席を立って咲子の父に頭を下げた。
「私に謝るんじゃなくて野球に謝れ!グランドに向かって頭を下げろ!」
「すみませんでした」
グランドの整備をしていた三人の老人たちの目が、バックネット裏に向かった。老人たちの目に、グランドに向かって頭を下げている四人の生徒が映った。ただ、四人の生徒の頬に流れている涙は見えなかった。
「聞こえたか?」
遠山が四人にそう言うと,、四人は立ったまま咲子の父の方に体を向けた。
「野球の神様は君たちを許してくれたか?」
「聞こえませんでした」
四人の中で一番身長の高い生徒がそう言った。
「許す!」
咲子の父は大きな声でそう言った。そしてこう続けた。
「私にはしっかり聞こえた。君たちは許された。いいか、よく覚えておけ。悪は隙を見せると人の心に纏わりつく。悪とは手を握るな。悪を断ち切る強い心を持て。下を向き続けなければならないような人生を送るな。わかったな?」
「はい」
四人の返事は綺麗にそろった。

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