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flower
第2章 flower

「こんにちは。良かったら隣いいですか?」
( えっ?)
瞬きの先には顔馴染みの老人がニッコリと笑って見下ろしていた。
「あっ、渡辺さん。こんにちは。あっ、どうぞ」
慌てる美里は親指を隠しながら、席に置いてあった荷物を取り膝下に置く。
「ありがとう。これ良かったら、お口に添えて下さい」
渡辺は汗をかいたペットボトルのお茶を差し出す。
「えっ?いつもすみません、、遠慮なく頂きます。今日も奥様の?」
「ええ。顔を見にね。それで旦那さんは変わらずお元気ですか?」
「お陰様で、、全く変わりはありません」
「それは何よりだ。結構結構」
語るような独特な口調はなんとも優しい味がある。渡辺は少々痩けた頬を崩すと綾香も釣られるようにニコリと笑い、改めて言葉とは不思議だなと思い知らされた。それは嫌味はもちろん同情を微塵も感じさせない強さがあった。
看護師によれば印刷会社の元社長だと聞いている。
この渡辺はとある理由から医師や看護師からも一目置かれるちょっとした有名人だ。
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