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第4章 花のように




五年前


「ひょっとして美里さんは鳥とか花が好きだったりする?」
あれは都内の国立公園での三回目のデート。私と美里は春の強い陽射しを避けるかのように木陰に置かれたベンチに仲良く腰掛けていた。

それこそね。美里は鳥のように何度も頷きながら花のように笑っていた。

花のように、、鳥のように、我ながら古風な表現だと情けなくも思うのだが、こんなありきたりの言葉こそが真実というものなのかも知れない。

「えっ!なんか嬉しい!気付いてくれたのは優哉さんが初めてかも!」
目の前で微笑む美里は子供のようにはしゃいでいる、
「当たった?それなら良かった」
君ばかり見ているから、などとは怖くて言えない。それこそ私はそんな名も知らぬ花や鳥に絶えず嫉妬していたのだからもう世話がない。
「凄い!さすがは脚本家さんは人をよく見てるね」
そう、この頃の私はさして金にならない劇団の脚本( ほん)ばかり書いていた。美里はIT会社の総合職であり、この劇団のファンだった。
「脚本家って、、とりあえず認めてくれてありがとう。でもまだまだだよ。まだだ。僕はもっと上を目指す」
これは完全な言い訳だ。確かに現状は食べて行くのがやっとの状態だったが、劇団員からは先生などと呼ばれてた私はどこか尻の座りが悪い固い椅子にすらに満足していた。
「上?」
「つまりテレビや映画の世界さ」
私はこの時に誓ったんだ。美里を幸せにするとね。
「そうなんだ、、凄いね」
「そんな事はないよ。目指すなら誰でも出来るさ」
「いやいや!無理無理!で、脚本家って大変?」
「いや。そこまで大変じゃないよ。用意した、、それこそ特殊な設定に癖のある人間を落とせば好き勝手にドラマは生まれる。愛情しかり憎悪しかりね。要は人間の観察記録さ。ただ、、あまりに想定外な動きをしそうになったら台詞というブレーキを掛けるだけさ」
私は得意げに語った。
「ふーん。まるで神様みたい、、」
「そう、、かもね。だから人物設定はとにかく細かく設定するんだ。生い立ちはもちろん、癖、趣味、仕草、容姿、それこそ子供時代のあだ名まで。そしてそれにまつわるエピソード。とりあえず骨という骨を作って物語という肉を付けるんだ」
「へぇ、、登場人物にモデルさんっているの?」


美里の長い髪が私の心のように揺れ乱れた。
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