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flower
第2章 flower
渡辺は笑いながら、持っていたセカンドバックから少々大きめの電卓を取り出した。
「これを是非使ってください」
「えっ?」
「今時はスマホですよね。でもね、移動中や退屈しのぎに計算する事ではありません。じっくり、、とにかくじっくり考えて下さい。数字とはいえ人生なんです」
電卓は新品ではない、というよりかなり使い込まれていた。裏には渡辺印刷とマジックで描いてある。
「、、妻からです。実を言えばこの提案も妻なんです」
「奥様、、」
「実は、、今日で妻は退院なんですよ」
「えっ?」
思わず美里は言葉を失くした。
つまり、、
「まっ、、そういう事です」
そこに笑顔はない。つまりそれは長い病魔と闘いの終わりを意味していた。

、、、、その時だ。

「失礼、、ちょっといいですか?親父、、さっきからお袋が探しているんだけど、、いいか?」
( えっ?)
ふと美里が見上げると上品なスーツ姿の男が二人を見下ろしていた。
( あっ、、)
渡辺の息子だろう。母親に似て端正な顔立ちのスマートで長身。ただ言葉尻が荒く、苛立っているのが分かりやすい。
「ごめんなさい。私が長々と、、」
「いえ。年寄りの話は長いでしょう」
軽い会釈をする笑顔の息子。だが、目は全く笑っていない。
「違います!私が聞いて貰っていたんです!」
だからか、思わず同様に言葉が荒くなる
「、、そうですか」
かわすように息子は父親を見下ろしていると
「、、おい!今行くから!お前はあっちに行け!」
渡辺もまた人が変わったかのように不機嫌さを隠そうともしない。
先代とおそらく、二代目。色々な軋轢があるのだろう。
渡辺はそれこそ手で追い払うと、息子は息子で、では失礼、と背中を見せ院内の雑踏へと早足に消えた。
「、、失礼しましたね」
「いえ、息子さんですよね?」
「ええ。で、美里さん、、だから今日でお別れです。色々、、助かりましたよ」
渡辺は頭を下げる。
「私は何も、、」
「いいえ。何かあったらいつでも相談して下さいね」
渡辺は名刺を美里の手に握らせた。
「ありがとうございます。じゃあ、、奥様に挨拶を、、」
最後に、、
「大丈夫です。今は自分の事だけを考えて下さい」
渡辺は有無を言わさぬ口調で言い切った。
「妻はね、長らく経理を担当してましてね。これは愛用の電卓です。ただ、、」
「、、」
「それをわざわざ病院に持ち込んだ。分かりますよね?」
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