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flower
第2章 flower

「教えて、、」
美里は両手で顔を隠し伏せた。す
「美里さん?」
「もう、、」
籠った声はまさに何かが崩れる一歩手前だ。
「分かりました、、では教えましょう」
「えっ?」
美里は目を見開き、その微笑む老人を改めて凝視した。
「ただね、美里さん。これはあくまで老人の戯言です。気休め程度で聞いて下さいね」
深いシワを寄せた表情を見せる渡辺は落としたペットボトルを拾い、胸ポケットから取り出したハンカチで口元を丁重に拭き美里の手の上に再び置くと、今度は内ポケットから真新しいハンカチを、差し上げますよ、と手渡した。
そう、いつの間にか美里の頬に大粒の涙が伝っている。その渡辺は慌てて駆けつけた事務員に、大丈夫ですよ、と笑っていた。
「、、ありがとうございます。是非、、聞かせて下さい」
「分かりました。ただくどいですが、老人の戯言です。答えではありません。あくまで選択枠の話です」
「、、、、はい」
「人はね、大切な人を喜ばせす為ならどんな状況でも自ら動きます。逆に大切な人を悲しませたくないからこそ自らを止める事も出来る」
「はい」
「一見同じように聞こえますが厳密には違いますよね?喜ばせたい、とは今以上に愛されたいの願望がある。悲しませたくない、とはあくまで現状維持なんですよ。つまり攻めと守り。どちらが良い悪いではなく、、どちらを優先するかで二人の関係性がこの年寄りには薄っすらと透けて見えるのですよ」
「、、、、」
「例えば浮気心などもっともたるものでしょうね。ただ対象の相手が二人になりますが、、」
渡辺は笑った。
「もっと飛躍するならば殺人もそうかも知れません。大切な人が喜ぶからと真新しい刃を平気で他人様に向けるご時世だ。ただ大切な人を悲しませてはいけないとその刃を捨てる人もまたいる。ただ、、いかなる場合も根底にあるのは愛なんです。歪んでいようが汚れていようがね。綺麗事?多いに結構じゃないですか!」
渡辺は笑った。
「、、殺人」
「私はね、知っていますよ。美里さんは毎日のようにこの病院に通い、そして、、、、止めている。しかも対象の相手は同じ優哉さんだ。そしてその優哉さんには意思表示が出来ない。だから答えなどない。そして何より美里さんは知っている。一番辛いのは自分じゃない、とね」
「、、、、」
「そう、、何より一番辛いのは石橋優哉さんなんですよね」
( あっ、、)
美里は両手で顔を隠し伏せた。す
「美里さん?」
「もう、、」
籠った声はまさに何かが崩れる一歩手前だ。
「分かりました、、では教えましょう」
「えっ?」
美里は目を見開き、その微笑む老人を改めて凝視した。
「ただね、美里さん。これはあくまで老人の戯言です。気休め程度で聞いて下さいね」
深いシワを寄せた表情を見せる渡辺は落としたペットボトルを拾い、胸ポケットから取り出したハンカチで口元を丁重に拭き美里の手の上に再び置くと、今度は内ポケットから真新しいハンカチを、差し上げますよ、と手渡した。
そう、いつの間にか美里の頬に大粒の涙が伝っている。その渡辺は慌てて駆けつけた事務員に、大丈夫ですよ、と笑っていた。
「、、ありがとうございます。是非、、聞かせて下さい」
「分かりました。ただくどいですが、老人の戯言です。答えではありません。あくまで選択枠の話です」
「、、、、はい」
「人はね、大切な人を喜ばせす為ならどんな状況でも自ら動きます。逆に大切な人を悲しませたくないからこそ自らを止める事も出来る」
「はい」
「一見同じように聞こえますが厳密には違いますよね?喜ばせたい、とは今以上に愛されたいの願望がある。悲しませたくない、とはあくまで現状維持なんですよ。つまり攻めと守り。どちらが良い悪いではなく、、どちらを優先するかで二人の関係性がこの年寄りには薄っすらと透けて見えるのですよ」
「、、、、」
「例えば浮気心などもっともたるものでしょうね。ただ対象の相手が二人になりますが、、」
渡辺は笑った。
「もっと飛躍するならば殺人もそうかも知れません。大切な人が喜ぶからと真新しい刃を平気で他人様に向けるご時世だ。ただ大切な人を悲しませてはいけないとその刃を捨てる人もまたいる。ただ、、いかなる場合も根底にあるのは愛なんです。歪んでいようが汚れていようがね。綺麗事?多いに結構じゃないですか!」
渡辺は笑った。
「、、殺人」
「私はね、知っていますよ。美里さんは毎日のようにこの病院に通い、そして、、、、止めている。しかも対象の相手は同じ優哉さんだ。そしてその優哉さんには意思表示が出来ない。だから答えなどない。そして何より美里さんは知っている。一番辛いのは自分じゃない、とね」
「、、、、」
「そう、、何より一番辛いのは石橋優哉さんなんですよね」
( あっ、、)

