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第16章 午前11時、濡れたシャツの奥で

お風呂に浸かりながら、直樹さんのことを考えていた。

知らない私に、こんなにも優しくしてくれるなんて。

彼の温かさが、体だけじゃなくて心にもじんわりと染み渡って、胸の奥がドキドキと高鳴っていた。

体がぽかぽかに温まると、そっと湯船から上がり、彼が用意してくれていたジャージに着替えた。

リビングに戻ると、乾燥機の音が静かに響いている。

私の濡れた服を乾かしてくれているのだと思うと、少し恥ずかしい気持ちになった。

「梓さん、あと20分ぐらいで乾きますよ。」

直樹さんがリビングに戻ってきて、優しい声で知らせてくれた。

思わず小さく「ありがとうございます」とお礼を言い、照れくさそうに頭を下げた。

彼の存在が近くにあるだけで、不思議と安心できて、心が少しずつほぐれていくのを感じていた。