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すぐ読める官能小説集
第4章 『HITORIASOBIノヨル』
僕はひとり虚しくHITORIASOBIをしている。
もうひとりのボクは、強い興奮を示し自己主張するが如く、屹立していた。
そして、先端からエロスの涙が滲んでいた。

快感は、一瞬のヨロコビが近いことを告げていた。

『明日は何時に集合する?』
知人の女性から唐突にLINEがきた。
僕はHITORIASOBIをしている。
返信は明日でも良さそうな内容だった。

『ねえ。起きてないの?』
『起きてるよね?」
『絶対起きてるよね?』

鬼LINEに思わず笑った。
なぜこんなに勘が鋭い。

ただどんなに彼女の勘が冴え渡っていても返信はできない。
もうひとりのボクはそれを許さない。

彼女のLINEに気を取られていたから、いつ間にか画面の向こう側も終わりが近いことに気づいていなかった。

画面の向こう側の男は、終わりが近いことその声音で示した。
そして彼のもうひとりのボクから白き蜜が溢れ出した。

僕のもうひとりのボクはまだ快感に耐えていた。
画面の向こう側とは、タイミングが合わなかった。

こうなると、最後の一瞬を求めて動画を適当なところまで巻き戻したり、進めたりする。
この詩情なき行為に静かな嫌悪感が心の中に広がる。

しかし、もうひとりのボクはもう最後の一瞬を求めて詩情を破壊しながら真っ直ぐに欲望した。

もうひとりのボクから白き蜜が漏れでた。

HITORIASOBIが終われば、詩情が回復するわけではなかった。
役割を終えた動画だけが虚しく流れ続ける。

そして詩情を失った僕のカラダも意味のないカラダに戻っていた。

彼女のLINEに返信しようかと思った。
でもHITORIASOBIを終えた薄汚い自分に返信する資格はなかった。

それに今更返信してもと思った。
明日の朝、返信すればいい。
スマホを見たらもう深夜2時だった。

(終)
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