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熱帯夜に溺れる
第5章 沈殿する夏、静止する冬
 純が淹れた温かいほうじ茶で一服ついた叔母がさっそく詮索を始めた。

「純くんも36だろう? そろそろ決まった相手を見つけて兄さんと義姉さんに孫の顔を見せてあげないと兄さん達が可哀相だよ。うちなんか孫が7人もいて7人分のお年玉と誕生日の出費が毎年大変でねぇ」
「泰《やす》兄さんの家は子沢山ですからね」

 従兄の泰之《やすゆき》の家庭は総勢5人の子供がいる。上ふたりは双子だ。
 泰之の妹の家庭にも2人の子供がおり、7人の孫に囲まれた叔母には、いまだに孫がひとりもいない自分の兄が不憫《ふびん》でならないらしい。

「で、どうなんだよ。今までもそれなりに女は居たんだろう? 泰之が羨ましがっているんだよ。純くんは泰之と違って見た目がシュッとした二枚目だからねぇ。今はいいヒトはいるのかぃ?」

 叔母の追及を無言の微笑でやり過ごす。莉子の存在は両親にも叔母にも明かしたくなかった。
 恋人の存在を明かせば、まず莉子の年齢に驚かれる。

 挙句の果ては援助交際ではないのか、若い女に騙されているのではないか、莉子の親への挨拶は済ませているのか、結婚するつもりなのか等、要らぬ心配や詮索をするに決まっている。そのすべてが純には鬱陶しかった。

「親だって老いていくもんだよ。将来的に兄さん達の介護はどうするのさ。お嫁さんがいないなら純くんが全部やるの?」
「介護をさせるために嫁を貰うのは目的が違うでしょう。叔母さんだって、あちらの親の介護をする気で、旦那さんに嫁いだんですか?」 

 純の切り返しに常に饒舌《じょうぜつ》な叔母が初めて口ごもった。

「それはまぁ……そんな決まりごとは聞いてないわっ! と言いたいのよ、私も。若い頃はそんなことも考えずに勢いで結婚するものだからね。でもあちらの親の介護が嫌とは言えないんだ。嫁って言うのは嫁ぎ先で一番立場が弱いからねぇ」

 女ではない純には嫁の立場の弱さや叔母の苦しみは察することしかできないが、嫁ぎ先であっても他人の親の老後の世話を、人様の家で大切に育てられた女性が行うことが当然とされる社会の仕組みは、理解に苦しむ。

 自分も同じ葛藤を抱えているくせに、純の親の介護のために嫁が必要だと叔母は考えている。理不尽の連鎖を止めようとは彼女は思っていない。
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