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熱帯夜に溺れる
第5章 沈殿する夏、静止する冬
 〈公園で待ってる〉と純からのメールが入っていた。カフェの前で由貴と別れ、莉子は八丁通りをとぼとぼと歩く。
 寒空の下、公園のベンチで缶コーヒーをすする純を見つけても、彼のもとに向かう足取りは重たい。

 園内のイチョウの木が風を受けて闇の中でざわめいている。ひらり、はらり、と舞ったイチョウの葉がベンチの前で立ち止まる莉子の足元に着地した。

「あいつに何を言われた?」
「……純さんは一生結婚しないって」
「ははっ。昔のことかなり根に持たれてるんだろうな」
「私は……純さんにはいつも笑っていて欲しい。幸せを感じていて欲しい」

 ベンチに座る彼を見据えて、ぽつり、ぽつりと本音を零す。街灯の明かりに浮かぶ純の顔は莉子が見慣れた優しい笑顔を口元に宿して、彼女の想いを受け止めてくれた。

「だけど幸せを分かち合う相手が私じゃなくてもいいなんて、そんな大人なことは言えないの。……ごめんね」
「莉子は悪くないよ。何も悪くない」

 切ない心から零れ落ちていくのは、想い? 涙?

「純さん……好き」
「うん」
「大好き」
「俺も。莉子が大好きだよ」

 純の胸元に迎え入れられても、溢れた涙は止まらない。ふたりの愛はちゃんと、ここに存在しているのに。
 彼は独りを望むのか。そんな生き方を悲しいと思ってしまう一方、彼にはいつまでも独りでいて欲しいと身勝手な願いを抱く自分が大嫌いだ。

(私以外の人を好きにならないで……私以外の人と幸せにならないで……)

 ごめんなさい。ごめんなさい。
 〈大人〉になれなくて……ごめんなさい。
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