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熱帯夜に溺れる
第5章 沈殿する夏、静止する冬
「……私、来年の春には東京に行くんです。東京のネイルサロンに就職が決まっていて」
「へぇ、凄いじゃない。そっか東京に……。純とはどうするの?」
「遠距離で頑張ろうとも何も言ってくれませんでした。結婚の話も出なくて。だからたぶん……別れることになると思います」

 思い出すのは食べかけの冷めたホットケーキ越しに見た、純の哀しげな微笑み。遠距離恋愛の可能性にすがる莉子の期待を、残酷に切り捨てた彼の本心がようやく見えた。

「遠距離恋愛の終着地って何かわかる?」
「終着地?」
「破局か結婚よ。どちらかが相手の人生に合わせて仕事と住む場所を変えてめでたく結婚するか、そこに行き着く前に破局か。もし純と莉子ちゃんが遠距離をするにしても、純が東京に来てくれるか莉子ちゃんが東京を諦めてこっちで生きていくか、別れないためにはそれしかないでしょうね」

 遠距離恋愛の結末は破局か結婚。わかってはいても、突きつけられた現実に心を抉《えぐ》られる。

「……純さんが私のために仕事を変えて東京に来ることはないでしょうし、私が東京を諦めてこっちに居続けることもないと思います」
「当然よ。まだハタチだもの。ひとりの男のために上京のチャンスを捨てるなんて勿体ない。莉子ちゃんには選択肢も時間も無限にある。正直、羨ましいな」

 由貴の第一印象は良くはなかったが、立場を同じくした者同士のわかり合える部分はあった。今の莉子の心境を理解できるのは由貴だけだろう。

「純は一生誰とも結婚しないで独りでいると思う。むしろ誰かと結婚したとしたら、私も莉子ちゃんも純を許せないんじゃないかな? だって私達とは結婚という形を選ばなかったんだもの」

 莉子は何も言えなかった。由貴の言うとおりだと思ってしまったから。
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