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爛れる月面
第2章 湿りの海

そう吐き捨てると、紅美子は背すじを伸ばして一歩踏み出し、井上のそばを通り過ぎていく。
「どこにいくんだ?」
「シャワーに決まってんじゃん」
背を向けたまま言い、バスルームへと入った。そこも、記憶にある場所だった。別に、どうということはないのだ、何も考えず、終わらせればいいのだ──、カーディガンを脱いで洗面台の上に畳み置き、躊躇を催す前にロングスリーヴシャツもスキニーパンツも脱ぎ捨てる。昨日から何度も覗き込んできたというのに、大きな嵌め込みの鏡は、髪を垂らして横目にも映らないようにしてブラを外した。長い脚からショーツを抜き取る際には、念のために目も閉じる。
「……んっ」
鏡から斜向いて身を起こしたところで、突然、後ろから抱きすくめられた。「ちょっ……、勝手に触んなっ!」
会社の女子トイレとは違って大声で怒鳴りつけたが、アンダーシャツを脱ぎ捨てた胸板を背に感じ、早速身の至るところが粟立った。不吉な肌波に身を捩り、
「きたないってのっ。離れろよっ」
「多少汚くてもかまわない」
「汚いのはお前だってのっ。がっついてないで、ちゃんとシャワー浴びてからにしろよっ」
「僕がシャワー浴びてるあいだに、指輪を探し出してトンズラするつもりだろ? 危ないコールガールの手口だな」
「そんなこと、しないってばっ。いいから、早く離れて!」
「それは無理だな」
「ふざけ……、んっ」
脇の下から回ってきた手が、バストの片方を鷲掴みにした。もう一方の手は、腰から下腹、ももまでをねっとりと撫で回す。ふくらみを蹂躙する獰悪な手、肌に貪着する陰湿な手、いずれも強く裸身に巻き付いて、身じろぎができない。
「やめろ……」
「どこにいくんだ?」
「シャワーに決まってんじゃん」
背を向けたまま言い、バスルームへと入った。そこも、記憶にある場所だった。別に、どうということはないのだ、何も考えず、終わらせればいいのだ──、カーディガンを脱いで洗面台の上に畳み置き、躊躇を催す前にロングスリーヴシャツもスキニーパンツも脱ぎ捨てる。昨日から何度も覗き込んできたというのに、大きな嵌め込みの鏡は、髪を垂らして横目にも映らないようにしてブラを外した。長い脚からショーツを抜き取る際には、念のために目も閉じる。
「……んっ」
鏡から斜向いて身を起こしたところで、突然、後ろから抱きすくめられた。「ちょっ……、勝手に触んなっ!」
会社の女子トイレとは違って大声で怒鳴りつけたが、アンダーシャツを脱ぎ捨てた胸板を背に感じ、早速身の至るところが粟立った。不吉な肌波に身を捩り、
「きたないってのっ。離れろよっ」
「多少汚くてもかまわない」
「汚いのはお前だってのっ。がっついてないで、ちゃんとシャワー浴びてからにしろよっ」
「僕がシャワー浴びてるあいだに、指輪を探し出してトンズラするつもりだろ? 危ないコールガールの手口だな」
「そんなこと、しないってばっ。いいから、早く離れて!」
「それは無理だな」
「ふざけ……、んっ」
脇の下から回ってきた手が、バストの片方を鷲掴みにした。もう一方の手は、腰から下腹、ももまでをねっとりと撫で回す。ふくらみを蹂躙する獰悪な手、肌に貪着する陰湿な手、いずれも強く裸身に巻き付いて、身じろぎができない。
「やめろ……」

