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爛れる月面
第2章 湿りの海
 長く待たされてやっと変わった青信号を渡り始めると、逆に、電話では呼び止められた。

「その……、悪かったな。昨日は途中で消えちゃって」
「まったくだよ」
 努めて笑いを聞かせ、「あんたのためにプライバシー無視された私の身にもなってよ」
「ああ、感謝するよ」

 なんだか早田も、笑い声が空々しかった。

「言っとくけど、ヤリ捨ては、ナシだからね? 光本さんが本気なら、だけど」
「本気じゃなさそうだけどな」
「そこは分かんじゃないの? あんたなら」
「んだよ、久々に会ったのに手厳しいな。女帝様は」
「本気にさせるんなら責任取れよ、って言ってるだけ」

 また間がある。気軽に声を掛けて関係を持ってしまった責任を取りたくない、そんな沈黙ではなかった。

 しかし、怪訝に思って尋ねる前に、

「……わかったよ。長谷に迷惑はかけない。わりぃ、さすがに行かなきゃ」
「連絡先、送ってね」
「ああ。このあと送る。じゃ」

 切れた電話をバッグにしまわずに手に持ったまま歩いていると、約束通り早田からショートメッセージが来着した。電話番号しか書いておらず、その他の言葉はなかった。不自然な間は、取り込んでいたからだろうか。忙しいのに手間取らせて悪いことをした、と少し申し訳ない気持ちになりつつ、足を停める。道の反対側に、コンビニがある。車の切れ目を狙って早足で渡り、シガレットケースを取り出した。咥えたまま肘を持った腕を顔前に掲げ、もう一度、画面を凝視する。

 火を点けて半分近くを吸ってから、番号をタップした。耳には当てずに、微かな呼び出し音を聞くあいだ、何てことはない、と何度も反芻をした。鏡となったガラスに映る女が横目に入る。ずいぶんと険しい顔をしている。呼び出し音が途切れて目線を戻し、唇を開きかけたが、留守番電話の音声が流れてきて、紅美子は電話を切った。
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