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爛れる月面
第2章 湿りの海
 予想通り、今日も伝票はトレイに堆くなっていた。おそらく午後には同じくらいの量が来るのだろう。ざっと眺めて優先順位を考え、念のため経理にその順番でよいか確認する。どうやら、それほど厄介なものはなさそうだ。

 あとは、ひたすら入力していくだけだった。単に紙伝票をデジタル化するだけなら退屈な作業だが、全員が正しく起票しているとは限らない。システムに入力する際に紅美子たちがそれらをチェックするという役割も負わされている。なので、集中して行なう必要があり、普段は紗友美と雑談したりして適度に脳の休憩を取るのだが、今日はその相手がいないし、今日に限っては必要なかった。

 昼休みは食事を摂らず、自席に浅く腰掛けて背凭れに身を預け、腕を組んで目を閉じていた。眠っているわけではなく、思考をストップしているだけだった。気がつくと、声をかけられることなくトレイに新たな紙束が置かれていた。想定内だった枚数をざっくりと確認しても、特別問題があるものはない。午前中のペースを考えると、時間内に終わらせることができるだろう。もうすぐ昼休みが明ける。やはり、紗友美は来るつもりはないらしい。

 経理に午後ぶんを確認して自席に戻り、職務を再開しようとしたところで、突然、振動音がした。

「……」

 マウスの隣に置いていた携帯が震えている。折り返しのアイコンとともに、早田から聞いた番号が表示されている。

 紅美子は携帯を手に取るも、すぐに出ることはできなかった。事務室には一人だが、いつ誰が入ってくるかわからない。シガレットケースをバックから探し、携帯とともに持って部屋を出たところで、あっさりと振動は止まった。折り返すにしても、今はしないにしても、無性にタバコが吸いたかった。

「え……、あ……」
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